華やか!藤森の田遊び(シリーズ風景の中へ11)

焼津市の藤森の田遊びは、国指定重要無形文化財で、大井川下流域藤森集落の大井八幡宮の例祭として毎年317日に執り行われている。当日は午前中から神事が行われるが、午後6時頃からの芸能を見に行った。
未婚の男性のみで行われる掟になっていて、中学生高校生などが中心である。私は2,30年まえに一度見たことがあり、そのとき若者らはだらしない態度だったが、今回は一変して緊張感とエネルギーが溢れていて、祭りへの熱意が感じられるものだった。きっと住民あげて大変な努力があったのだろうと察する。

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華麗な猿田楽 地の生気を呼び覚ましている


この祭りはとても色彩豊かである。まばゆいほどの赤い腰紐をタスキに結びつけ、被り物も華やか。元はこの一年でお産をした女性の腰紐をつけたのだそうで、しかも若者は皆1週間ほど籠って禊をして臨んだという。豊穣への敬虔な祭りであり若者の成人儀礼の意味もあったのだろう。

演目は一部欠けているものもあるが、番外のものも含め25をこえる。特に終わり近く演じられる「間田楽」と「猿田楽」は飾りがきらびやかである。猿田楽では桜の花に模した万燈花を頭につけ、華やかに踊り、祭りのクライマックスに相応しい。その所作を見ていると、全員いっせいに合図をして台地を踏み、下にかざした両手を「おー!」といううなり声とともに上に揚げる。それを何度も繰り返す。これは春の大地の生気を呼び覚ましている様に違いなく、こめられている祈りは原始的で切実だが、芸能としては美しい。

霜月祭りの激しさおどろおどろしさに比べてやはり平坦の農業文化らしく穏やかで、笛の音は、ゆったりして高低の変化のなく、満月の下に嫋嫋と吹き続けられていた。

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間田楽
(付録)
死者の霊が呼び起こされる場面が、折口信夫の「死者の書」にある。

「其時、塚穴の深い奥から、 ( コホ )りきつた、 ( シカ )も今息を吹き返したばかりの声が、明らかに和したのである。

をゝう……

 
不気味だが、どうやら、おおー、とか、うをーとか言うようだ。
ストラビンスキーの「春の祭典」についても後日ちょっとメモしたいと思っている。