赤き実やつやつや赤き霜の朝
サネカズラ(ビナンカズラ)
サネカズラ(ビナンカズラ)
サネカズラ(マツブサ科)
このつややかな赤は素晴らしい。見方によっては有毒にもみえる。
食べてみたら、うーん、少ーしは甘みが感じられる。中には大きな種がひとつ。
ビナンカズラ(美男鬘)という名前のほうがとおりが良いかもしれない。この名は枝の皮の粘る液体を水に溶かして頭髪を整えた、という昔の風習からのようだ。
サネカズラは古来歌にたくさん歌われていて、「後で遭う」という意味にかかる枕詞になることが多い。つるが延びてその先でまた出遭うということだろうが、出遭うというよりも、からみつくというリアルな語感なのかもしれない。
万葉集の巻2に鏡王女と藤原鎌足の相聞歌がある。
94は、サナとさ寝がかけてある。
万葉集の巻2に鏡王女と藤原鎌足の相聞歌がある。
94は、サナとさ寝がかけてある。
93鏡王女 玉くしげ覆ふを安(やす)み開けていなば君が名はあれどわが名惜しも
(玉くしげのように人目にたっていないのをいいことに夜も明けてからお帰りになると、やがては人に知られます。あなたのお名前はともかく、私の浮名の立つのはこまります。)
94鎌足 玉くしげみむまど山のさなかずらさ寝ずはつひにありかつましじ
(玉くしげを開けて見る、みむまど山のさな葛のような共寝を、しないでいることは、私にはできないだろう。)
「さなかずらのような共寝」とは、どんなものかと問うもおろか。この赤い実を見ていれば、なんとなく判る(ようで判らない?)。