蓮という名の駅

蓮(はちす)という信濃の駅を行過ぎぬ
 
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長野市から出たJR飯山線は、千曲川に沿ってうねうねと走り約30キロで飯山市に入る。私の故郷である飯山は、奥信濃の人口3万人を切りなお減少に悩む町だが、長野北陸新幹線が止まることになり駅舎が田舎に不似合いなほど立派になった。幸運なことに、在来の飯山線は新幹線開通後もJRとして残された。
 
在来線の飯山駅のひとつ手前に、蓮という駅がある。ハスの古い呼び名で「はちす」とよむ。もちろん無人で静かな駅である。私の個人的な感覚だろうが、時おり帰郷した際この駅に列車が止まると、時間も空間も、ウッと一瞬止まるような気がする。
 
ホームの反対側には、確か赤い屋根の寺があった。そこにハス田があったようなおぼろげな記憶がある。私は高校時代に飯山線を列車で通学した。この駅から乗り込む女学生がいた記憶がよみがえるが、長野市の女子高に通う生徒で、とても小柄な人だった。話をしたこともないし、とうぜん名前も知らない。
 
千曲川は、蓮駅の手前付近で狭い谷を抜け、大きく左右にカーブして飯山盆地に入っていく。このカーブ付近は大瀞とよばれて、高社山塊を水面に映し、美しい風景が広がる場所である。個人的思い入れを抜きにしても、飯山線沿線は四季折々じつに美しい。
 
この地の「はちす」という名はどこから来ているのか、私は知らないが、飯山は浄土真宗の寺の町であり、ハスは仏教の高貴な花である。そんなことも関係しているのだろうか。寺の町の入り口として実に相応しい名ではある。
ハスの花から、ちょっと故郷の「はちす」を思い出した