ヒサカキの臭い?

乙女らの眉寄せ行くやヒサカキの花

イメージ 1

近くの学校のわきを通ると、何か臭い。
かすかに下水のような、質の悪い蠟のような(そんなものは知らないのだが)、要するに余りいい臭いではない。
もしかしたらヒサカキかな、と思ってのぞくと、案の定植え込みはヒサカキで、まさに満開。花は小さいけれど小枝に不快になるほどびっしりとついている。
隣の枝には、黒紫の実をたくさん付けている。

イメージ 2

図鑑によれば、花期は3月ごろなのだが、まだ12月になったばかりだ。少し早いが、最近はいろんな花が早めに咲く傾向があるように思える。これもまたその例か。
俳句の季語としても春である。

匂いで気がつく花はたくさんある。
モクセイ、ジンチョウゲ、栗の花、ミカンの花。いずれもその香りが季節の到来を感じさせる。けれどヒサカキのように身近にあってこんなに臭い花は少ないのではないか。そういう意味でも、この花の臭いは特徴的である。

ヒサカキは、サカキ(榊)の代用として主にサカキのすくない東日本で植えられたという。そのため、非榊(ヒサカキ)という名がついたというもっともらしい説ある。いずれにせよ神仏にかかわる植物である。シキミが死臭を紛らすために寺院で使われたといわれるが、それと同様に、ヒサカキの香が神社で利用されたことがあったのだろうか。この臭いにして神事に使用されるということは、何か理由があったに違いないのだが、その事情は少し調べないとなんともいえない。

杉野孝雄氏はヒサカキの解説で、「静岡県内の(ヒサカキの)方言は、昔の人の生活に密着していたので多い。」と指摘して、枝葉を染物に利用したので「アクシバ」(灰汁柴)とか、実の汁を絞ると紫の液が取れるので「インキ」「インキモモ」、小鳥が食べるので「チンチロノミ」などと呼ばれたことを紹介している。(「春の植物」 静岡新聞社
やっぱり方言は豊かで暖かい。