ドボルザークの歌劇「ルサルカ」水の精とは?ー1

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開演前の舞台
静岡でドボルザークのオペラ「ルサルカ」を観る機会があった。
ドボルザークといっても、「新世界から」とか弦四「アメリカ」くらいしか知らないので、いったいどんな歌劇なのか興味津津だったが、期待に背かないもので、ラストシーンなどは思わずウルウルしてしまった。
 
「ルサルカ」とは、あまり耳慣れないがスラブ系の民話に登場する水の精であって、人間の王子様に恋をし、声を失うことを代償に美しい女の体をえたが、結局王子の浮気で恋は破綻し、掟に従って王子もルサルカも死んでしまうというお話である。
台本はチェコの民話やアンデルセンの「人魚姫」を土台にしてヤロスラフ・クヴァピルが書いたもので、ドボルザークが1900年に作曲。チェコ語によるチェコの国民的なオペラとして、ドボルザークのオペラの中で最も人気の高いものであるという。
 
オペラの舞台はちょっと変わっていた。
中央に階段状のセット、両側に高い壁、という簡素なもので、3幕とも舞台変換はなく、幕も下ろさずに演じられた。異様なのは舞台両袖に15人ほどの管楽器とハープが露出していて、オペラ歌手がその影になるという場面もあり、(舞台の狭さのための工夫だったのかわからないが、)私は感心しなかった。
静岡の劇団スパックの総監督宮城聡氏が演出、団員が歌わずに宮廷の踊りなどをコミカルな振り付けで演技するという協演にも驚いた。オケは読売日響、指揮は山田和樹、合唱は東京混声合唱団。歌手もレベルが高く、全編チェコ語で朗々とした歌いきりその声は観客を魅了した。私は特にヴォドニクの妻屋秀和の声にしびれ、ハイレベルな公演を十分堪能することができた。
 
正直をいうと、私は深い海や湖は好きではない。船に乗っている自分をイメージするだけで、生理的な不快感を感じてしまう。
これは、水の底に巨大な得体の知れないものが潜んでいて、その大きな目でじっと見られているというという不安である。そいつが口を開けただけで船は呑み込まれてしまう恐怖。
 
実は、私はルサルカをみてそれに似た不快さを感じた。それはなんだったのか。
以下ブログでしばらくの間、ルサルカの正体に対する歯がゆい接近の試みを行うが、およそ関心のない人には読めるものではないことを、お断りしておく必要がありそうだ。