「あさいち」=能登朝市の絵本

「あさいち」という輪島の朝市を描いた絵本を図書館から借りた。

地震と大火災で朝市が壊滅したニュース映像に衝撃をうけ、気に留めていたおりに、福音館書店能登の復興のために絵本を復刊したということを知ったからだ。販売の利益は赤十字に寄付するという。教えてくださったのは、石川県津幡町の「小さな図書館のものがたり」さんのブログだった。

勝手ながらブログを張り付けておく。

復興を願って復刊~『あさいち』(福音館書店) - 小さな図書館のものがたり

 

図書館に予約をしたのが3月初旬、だから私に回ってくるに2カ月かかったということになる。それだけ予約者が多かったようだ。調べてみると市の図書館には9冊ある。そして出版が今年の3月と紹介されているので、これは復刊本のことだろう。ただし私のところに来た本は、2009年2月1日の第5刷であり、今回何冊か新たに買い足した、と思われる。

素朴そのものの民俗資料的な手作り味噌のような絵本だった。絵は大石可久也、かたり=輪島・朝市の人びと、となっている。

冬の朝の光景。地元のおばさん(おばあさん)たちが夜明け前から魚を処理し、雪の下から野菜をとりだし、それから三々五々集まってきて、露店を構える。

「いらんけ」「こうてくだ」

文字の大半はおばさんたちの売り声だ。よく見ると買い物客は、どうやら地元の方々であり観光客ではなさそうだ。ということは観光化される以前の風景なのだろうか。初版は1980年なのでその頃の風景か。絵はキャンバスの地が見えてうす塗りで色もくすんでいる。そして朝市も終わり時間になるのだろうか、

「のぶちゃん うってもたん?」 「かれい のこったわ。ふでさん たべてくだ。」「おおきに。のぶちゃんも みずな もっていくまし。」と残り物を交換し合い、

ここでページをめくると、パタッと終わってしまい、おや!と思う。あとは雪の暗い能登の海岸の遠景の絵があるだけである。厳しい自然のなかの人々の日々の小さな営為。

 

わたしは2011年に冷やかして歩いたことがあるが、やはり観光客として覚めた目でみていたし、正直いっておばさんたちは不愛想に思えて、あまりいい印象を持たなかった。それは田舎の文化だったせいかもしれない。当時のメモに「西の外れの文四郎の店でコーヒー飲みつつウシル、海草、箸を買う。」とあるので、露店では物は買わず、またウシルは馴染めなくて結局使えなかった。

勿論この絵本の古い農漁村のイメージを、現実の朝市にオーバーラップさせるのは無理なことだろう。最近金沢とか津幡町などに出張して開かれたという、頑張っているニュースも聞いているので、災害を機にどう変わっていくのか関心があるところだ。

 

こんな民俗資料的な絵本を手にすると、真逆な生成AIを思い出してしまう。生成AIが急速に能力向上し、文章も絵もなんでもござれで、平均以上にすぐに作成してしまうようになった。(らしい。わたしは使っていない)

けれどこんな絵本は(いまのところまだが)AIには無理な気がする。しかしこれからはどうなるのだろう。生成AIにより労働にも生活にも大きな変動が起きている。私も長い間事務の仕事をしてきたが、そんな人間は不要になりそうだ。絵本も同じ運命で、こうした生味噌みたいな複雑な味も人の手を煩わせず、コンピュータが瞬時に造ってくれるようになるのだろうか。

そして被災地の復興プランもまた、生成AIで、住民の思いを取り込んだ味わい深いものをあっという間に作成してくれるのだろうか。無理だろうな。

そんなこんなを思いながら、もう新たに本を買わないというルールを外して、能登地震の覚えとして一冊手元に置くこととした。