2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

合歓の花(マメ科)

花合歓や童の頬にいたぶられ (はなねぶやわらべのほほにいたぶられ) 花のように見えるのは、元が白く、先が紅色の蕊である。これが放射状に噴きだしている。頬にあてるとフワフワッとして気持がいい。 表現しがたいぼんやりした風情は、古来和歌俳句に詠み…

マタタビ白むころ(マタタビ科)

夕間暮れマタタビ白し里へ二里 あれは何の花?と、初めて見る人はおそらく目を疑う。梅雨のころに山道をゆくと、あちこちに白いものが木々一面に広がっているのが見えるからだ。まるでそこに雪が積もっているかのようだ。 これは花ではなくて、マタタビの白…

簡単に花2題(ホタルブクロ、ネジレバナ)

なに容れて蛍ぶくろのうっとりと (小倉遊亀 「花三題「から 昭和60年) 空想の中では、ゾウもカバも、ナマケモノも入っていそうだ。世界中の子供らの夢を入れても、容量は十分にある。空想だから。 ねじれ花父祖伝来の左巻き この螺旋は上から見ると時計回…

ヤマアジサイ(アジサイ科)

アジサイや枯れて恥も外聞もなし (ヤマアジサイ) 私は手まり形ホンアジサイの、ぼってりした脂っぽい容姿よりも、ガクアジサイの、漫画のフキダシのような額がフッと外に飛び出している、あの不規則性のほうに愛着を感じる。 先日、朝市でフキダシのあるア…

びるぜんさんた丸や(処女聖マリヤ)―5

告解(おゆるし)や母微笑めば夏の雲 (ロザリオの聖母:生月島山田地区で最も古いものと思われ、 十字が描かれていないので、 潜伏時代のものと思われるという。) 「かくれキリシタンの聖画」に見た聖母は、乳房を顕わにしてイエスにふくませていた。 http…

アジサイ(アジサイ科)

アジサイの群青絵の具にありません 「紫陽花」と書く花は、白楽天が名前のわからないきれいな花の名を問われて、そのときに名づけたという漢詩がある。この花を、平安時代の源順(みなもとのしたごう)が、アジサイとみなし「倭妙類聚集」という辞書に書き込…

ササユリが咲いていた (ユリ科)

ササユリや甲斐の空堀在りし跡 (色はもう少し紅がある) 葉のスッスッと伸びた姿が、笹に似ているので笹百合と言われるようだ。 先日山梨県南部町の富士川を見下ろす山にあるアジサイ園に行ったら、駐車場の近くに保護されたササユリが何本も見られた。薄日…

びるぜんさんた丸や(処女聖マリヤ)―4

天草や夕焼けて番う空と海 (天草市有明: 道の駅リップルランドの夕焼け 2014.05) 今回の熊本大地震は大分付近にも飛び火して、震度4クラスが何度か発生している。400年前の1596年9月6日、やはり大地震が発生し大津波によって府内(いまの大分市街)は…

笹もちのかおり

笹もちや父祖伝来の石の臼 奥信濃の妹から「笹もち」が届いた。この頃では珍しい食べ物になったが、現地ではスーパーで売っているのだそうだ。さっそく焼いて食べると、笹独特の香りが香ばしくて懐かしかった。 さて半世紀前の話だが、村では田植えが済むと…

シャラまたは夏椿(ツバキ科)

落ち沙羅や女人成仏なり難し 下草に落ちたシャラ 夏椿(シャラ)が、また贅沢に咲きはじめた。 一日花だから、「まだもったいない」と思えるほどしっかりした花が、ぼとぼとと落ちてしまう。落ちてからも1,2日はそのままの姿で、かえって艶かしい。それが…

びるぜんさんた丸や(処女聖マリヤ)―3

破天連は呪いか真言(まこと)か黒揚羽 (聖母子の掛け絵:生月島壱部地区びわの首ツモトの御前様:「かくれキリシタンの聖画」(小学館)39ページから借用) 「天地始之事」では、イヴはゑわ、アダムはあだんで、原罪のりんごは、まさんの木の実という。(…

びるぜんさんた丸や(処女聖マリヤ)―2

烈日や殉教の像爪先(あし)垂らし(長崎26殉教者記念像にて) (絵は聖母子。浮世絵ばりに大胆な絵柄である。乳房を出している聖母像は世界各地にあるのだろうか。「かくれキリシタンの聖画」(小学館)40ページから転用。) 丸やの出産の描写がまた田園的…

ウツボグサが咲く(シソ科)

山里を恋しがらせようつぼぐさ 一年前に天竜の山奥に棚田を見にいった折に、道の脇から一株いただいたもの。わが庭の雑草園で花をつけた。想定に反してずいぶんと色が薄い。可憐ささえ感じさせる。この花を見ていると、花が終わって焦げ茶色い松ぼっくりのよ…

びるぜんさんた丸や(処女聖マリヤ)―1

蝶を追えば蝶に追われて野辺の道 「かくれキリシタンの聖画」より「受胎告知」 「びるぜんさんた丸や」とは一体何かと面食らうが、じつはびるぜんはポルトガル語のvirgemで処女の意味、すなわち聖母マリヤのことである。隠れキリシタンの口伝の聖書「天地始…