ウツボグサが咲く(シソ科)

山里を恋しがらせようつぼぐさ
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一年前に天竜の山奥に棚田を見にいった折に、道の脇から一株いただいたもの。わが庭の雑草園で花をつけた。想定に反してずいぶんと色が薄い。可憐ささえ感じさせる。

この花を見ていると、花が終わって焦げ茶色い松ぼっくりのようになった花ガラが草叢からツンツンとのぞいていた、半世紀前の晩夏の田舎道を思い出す。また数年前に、霧が峰の散策路に紫色のこれ以上ないというような深い色をした花を見出して、しばらく佇んだ記憶もよみがえる。

宇都宮貞子さんの「草木おぼえ書き」には、まつかさそうで出てくるが、ほかに甘い蜜の味がするらしく、スイバナ、ミツバナ、チチバナ、アマグサとか、時季的にサズイ(梅雨)グサ、タウエバナ、アメフリバナとか、漢方の夏枯草からきたのかカッコバナ、カゴソウなどとそれぞれ村々ではいろんな名で呼ばれていたことを紹介している。
この本は私の心を芯から和ませてくれる。

さて、甘い味がするからスイバナとよばれた、というから試してみた。利き酒のように口をすすいでから花びら一片を抜いて唇で吸う、・・・よくわからないが、ほんの僅かだが、そういわれれば少し甘いのか。
僕らは50年前は、もっと鋭い動物的な味覚を持っていたのだが、どこかで退化させてしまった。