合歓の花(マメ科)

花合歓や童の頬にいたぶられ
(はなねぶやわらべのほほにいたぶられ)
イメージ 1
花のように見えるのは、元が白く、先が紅色の蕊である。これが放射状に噴きだしている。頬にあてるとフワフワッとして気持がいい。
表現しがたいぼんやりした風情は、古来和歌俳句に詠みこまれたが、芭蕉奥の細道に良く知られた
  象潟や雨に西施がねぶの花
が、ある。いかにも頭の中でつくった句の感じがして私には面白いとは思えない。けれど数年前に象潟に行ったとき、道の駅からいまはもう何の変哲もない田んぼ風景をみながらこの句を思い出した。ここはかつては松島湾のような風景だったが、1804年の地震で隆起し干潟になってしまい、いまは田んぼと小さな丘が見えるだけである。しかしこの句のお蔭でだれもが300年前の風景をおぼろげに想像することができる。「歌枕」の威力というべきか。ちなみに道の駅は「ねむの丘」という名前だった。

宇都宮貞子さんの「夏の草木」によれば、
ねむの木をコーカ、コーカノキという例があるようで、これは合歓の漢字から来たものらしく、引いては、甲賀の国の名前になったとのこと。甲賀には合歓が多かったようだ。同じような意味で、合歓は「香」とも連想されたのか、奥信濃栄村では、お盆を迎えるとこの葉を落として乾燥させ粉にして、香にして焚いたと書かれている。
これはできそうだから、私も悪戯でやってみようかな。