黒い毛虫・芋虫

毛虫這う窓の桟からカーテンへ

毎年きまってアマドコロの葉に黒い芋虫が湧く。被害は少ないので、あえて除らずにそのままにしている。彼らがどういう成虫になるのか、あまり関心も持たずにいたが、今回ふと気になって調べてみると、どうやらヒゲナガクロハバチのようだ。そういえば見かけることがある。昔田舎のたい肥場などによくいた奴だろうか。蜂というからには、蜂の巣をイメージするが、いろいろな生態があることを改めて知る。

 

黒い虫というと有名な古典、「虫愛ずる姫君」を思い出す。改めてネットで探して現代語で読んでみると、これが面白い。この姫様はものごとの本質を的確に表現できる才女であるが、お歯黒はしない、眉毛は抜かないので黒々とした虫のような眉をしているなど世間常識を無視した子である。

 

『気味の悪い毛虫を面白がっているそうだ。』と、世間の人達が聞くのもたいそうみっともない。」と、(親たちが姫君に)申し上げなさると、

「かまいません。すべての物事を追求して、行く末を見るからこそ、物事には趣き(面白さ)があるのです。(そういったことも理解しないなんて)たいそう幼稚なことです。(このとおり)毛虫は、蝶になるのです。」と 毛虫が蝶に成長して変化するのを、取り出して見せなさった。

(以上は、WEB「フロンティア古典教室」を引用させていただきました。)

 

能弁で痛快である。よくこんな書き物が残されていたと感心する。

原文では毛虫を「烏毛虫」と表記して(かはむし)と読み、チョウになる、と書いている。毛虫がカラスのように黒いという捉え方をされていることが知れる。

では黒い毛虫とはどんなものか。虫を好まないのでよく知らないが、アゲハなどの立派な蝶になりそうもないと思える。

 

真黒な毛虫の糞や散松葉  子規 (明治35年

 (この毛虫はいわゆるマツケムシだろうか。子規はこの年はもう外に出歩けなかったはずなので、想像の句もしくは家人がみて子規に伝えたのかもしれない。「小園の記」明治31年)には、黄色い蝶が庭の松にひらひらしてやがて消えたあと、子規は正気を失い、数百のチョウと狂い踊る、とみるとそれは蝶ではなくて小さい神の子であった。高熱のもたらした夢であったが、生々しい記述がみられる。)

 

今年は早くから黒いチョウが出現していて、つい昨日、黒い蝶が庭の木にとまっているのをみた。やや大型の黒いアゲハチョウで、翅には後ろに飛び出している突起がなかったので、調べるとナガサキアゲハなのかと思えた。残念ながらカメラを取りに行く間に消えてしまい、素人判断なので確証はないが・・・。

散歩していたら、足下に黒いものが見えた。

もちろんこれはカラスノエンドウで、早くも黒いマメになっている。しっかりとみごとに黒い。黒い色素はアントシアニンというのだそうだ。黒いものは自然界ではやはり不気味な印象を与える。