フランス・ブリュッヘン氏逝去(♪シリーズ ロ短調5)

ブロックフレーテの名手、フランス・ブリュッヘンが先月なくなった。79歳。ご冥福をお祈りしたい。
ブリュッヘンは、最近は笛は吹かずに古楽器の18世紀オーケストラの指揮者として何度も来日しているが、やっぱり私にとってはブロックフレーテ吹きである。なにをおいても、「涙のパバーヌ」だろう。聞いた途端に小学生の縦笛が古楽器になってしまった。レコードジャケットでみる彼は、眼がぎょろっとした若者で、演奏も、またラフに見える長髪・衣装や姿勢も大きなインパクトがあった。


イムジチの四季が世界で大ヒットしていた頃だ。みんなベートーベンやブラームスなどを はじめとしたお説教ドイツ臭にうんざりしていたのだろう。ビバルディの軽快な合奏協奏曲、パッヘルベルのカノン、アルビノーニアダージョコレッリのクリスマス協奏曲。古楽にはそれまで知らなかった魅力が溢れていて、西洋音楽の多様で奥深い世界を教えてくれた。これらを何度聞いたことだろう。


もう40年以上前のことになるが、音楽には縁のなかった私は、仙台市の「無伴奏」というバロック喫茶に惹かれ通いつめて、そこでバッハの虜になった。ブリュッヘンに惹かれて、「無伴奏」のマスターのKさんの伝で2,800円のブロックフレーテを買った。当時日本育英会奨学金が月8,000円で、貧乏学生には大きな出費だった。Kさんからヘンデルソナタの楽譜を拝借して暫く練習に夢中になったこともあった。1970年代の初め頃だろうか、仙台にブリュッヘンの公演があり、マスターのKさんが「ブリュッヘン蔵王に案内してきたよ」、と話を聞いた記憶もある。


このプラスチックの笛はまだ手元に残っているし、バッハの傑作、BWV106182の冒頭のブロックフレーテのソナティーナ(ソナタ)は、40年経っても私の記憶の奥に鳴り続けている。

 
笛の音や高きに登り朗々と
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バッハの無伴奏チェロ組曲の編曲版(1973年来日時の録音)