クズの海外進出(マメ科:New野の花365日)

葛は秋の七草の一つであるが、風情はいまいちである。

いまどき堤防を歩けば、一面が葛でまるでシートのように覆われているし、蔓は路面にまで侵出してきている。近くの5mほどの電柱は上まで蔓がからまっている。厄介な雑草である。ただし甘い香りがほのかに漂いうっとりさせられると、やはり七草の一つかな、と見直す気にもなってくる。昔から生活に密接な草であって、マメ科で栄養があることから、馬が好んで食べたようだし、根からとる葛粉、蔓を加工した葛布などに活用された歴史があるが、今日は無用の長物である。
浅井康宏著「緑の侵入者たち」は、帰化植物を扱った本で、植物の越境の実態を興味深く説明しているが、この中でクズが、アメリカに渡り猛威を振るっている話がある。どうやら初めは牛や山羊の飼料、ついで法面などの緑化用に有用な植物として導入され、「クズの女王コンテスト」が催されるなど歓迎されたようだが、次第に爆発的に繁殖しはじめて悪者になっていったようだ。ちなみにKudzu-vineとつづり「カズ」と発音するらしい。
しかしこの繁殖力を考えると、今後は単なる厄介者ではなく、緑のカーテンや環境の厳しい例えば砂漠や都市の緑化などに大きな戦力となりうる気がして、放っておくのは勿体なく思えるが、いかが。
 
 葛の香や磧(かわら)の径(みち)はふと途絶え

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葛にはいろいろな花色があるが、これは派手なほうだ。