何処の産か本物かと言い葛湯吹く
正月そうそう喉風邪を引き込んで、声が出ない。
暮にポイント交換でもらった葛湯があることに気づいて、いれてみた。
ほのかにショウガなどの香りもして、じつに和らいだ気分にしてくれる。子どもの頃,熱で食欲がないとき、母が飲ませてくれた記憶が淡くよみがえる。
どこの産なのと思い調べると、製造者は奈良県吉野郡の会社。高級品ではないが、原材料名には「本葛粉」とあるから一応ジャガイモなどは混ざっていないのだろう。しかし吉野地方の葛の根からとった国産だとしたら、とてもこんな値段では買えないから、輸入粉だと思っておくべきだろう。
してみると照葉樹林文化の一端に当たるわけで、はるかな昔、海路を伝わって日本に到来した食文化なのかもしれない。
古事記や日本書紀には、神武が熊野からヤマトに進軍する折に、吉野や國栖(くず)にすむ未開の人たちを「土蜘蛛」「井の中に住む尾の生えた光る人」など異様な表現をしている。土の洞などに住んでいたことを意味しているのだろうが、おそらく北方の血の混じっている朝鮮系の「天津神々」=「神武」にとっては、熊野の人の生活も容姿も異様だったのだろう。
ということは、朝鮮ルートとは別に、南九州や土佐、南紀には、南シナからの海洋民が移住してきていて、彼らは朝鮮系とは容貌も文化も違っていた。葛の根を食用にすることも、この海洋民がたずさえてきた文化だったのではなかろうか。
ということは、お米を神様とする大和朝廷・奈良の文化人にとって見れば、葛粉など話題にする価値もなかったのかもしれない。一説に、クズという植物は、大和の國栖(くず)のひとが葛粉を売りにきたので、クズという名前になったという話もあるが、万葉集をみた限りでは首を傾げざるをえない。
微熱無聊の松の内である。