マツバランをみつけた

万緑やわれまた植物細胞を持ち

 

日陰を探して、山の農道に車を停めてぼんやりしていたら、脇の石積みに変なものが目に入った。初めて見るもので、花なのか枝なのか何だか全く見当がつかない。まわりはツタや花の終えたテイカカズラなどが繁茂していて、その隙間から顔をのぞかせていた。

帰宅してネットで調べてみると、「マツバラン」の可能性が極めて高い。

 

「マツバラン」。

古いシダの仲間でマツバラン科。熱帯や亜熱帯に生ずる結構珍しいもので、静岡県では絶滅危惧種Ⅱに指定されている。根も葉もないらしい。

ただしこのマツバランは、江戸時代に大流行した園芸植物でイワヒバと双璧をなすものだったのだという中尾佐助著「花と木の文化史」では、日本の古典園芸植物として解説されている。古典園芸植物とは、江戸時代に流行し明治以降衰えたもので、オモト、セッコク、フウラン、マンリョウ、変化アサガオ、斑入り植物など様々を挙げている。

そして、高度に品種改良されたものだが、「品種改良の美学が、本能的美学とははなはだしく異なっていて、西洋にはかつて存在しなかった特殊なジャンルをつくっている。その結果・・・西洋人には全く理解力が欠けていて、国際的評価はほとんどゼロと言っていい。」とのこと。

 

ところが、マツバランは「現生の陸上植物のその全部が、古生マツバラン類から生まれてきている。」(もちろん顕花植物も含め)「陸上植物のすべての、大祖先とみられている」という大変なお方であった。

また現生マツバランは、日本でもまれな存在であるが、日本人はそれを探し出し、園芸化した。天保6年(1835)出版の「松葉蘭譜」には122品種が記述されている。とも書かれている。以上、中尾先生から教えていただいた。

 

こんなものが、裏山の道路わきにあったとは、調べてみて驚いた。

わが庭にも、オモトやマンリョウ、センリョウ、ヤブコウジなどが自然に生えているが、江戸時代の風景に近いのかもしれない・・・。