サザンカとツバキと

山茶花や赤くこぼれて白もまた
 
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(赤い山茶花
山茶花が盛りを超えて、季節は次第にツバキに移っていく。山茶花は冬の季語で、ツバキは春の季語となっている。まだまだこれから冬本番だけれど。
 
句の解説をするのは恥ずかしいが、碧梧桐の有名な句
赤い椿白い椿と落ちにけり
をもじったもの。
山茶花は散るのだが、椿は落ちる、が日本語の使い方らしい。
 
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(白い山茶花
さて、ヤブツバキは、学名がカメリア・ジャポニカで、列記とした日本原産の花である。サザンカもまた日本原産で、この二つはともにツバキ科ツバキ属で近い種である。
日本のツバキは18世紀、江戸時代にいわゆるプラントハンターらにより、西洋にもたらされた。それがブームを引き起こしアンドレ・デュマの「椿姫」に開花していくのは誰もが知るところだ。
 
この秋にツアー旅行でドレスデンから15kmほどのエルベ川沿いにある、「ピルニッツ宮殿」を訪れたのだが、そこに樹齢200年を越す大きなツバキが繁っていた。これは18世紀に日本を訪れたスウェーデンの植物学者ツンベルク(トゥーンベリ)という人が、長崎から椿の苗を4本持ち帰ったものの一つで、唯一現存するものだという。
花は咲いていなかったが、ネットなどで見ると赤いヤブツバキに見えるが、よく判らない。
 
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(左の茂みが件のツバキ 右手に空の温室)

それだけでも感心するのだが、隣に何も入っていない大きな温室があり、なんと寒い時期の数ヶ月は、その温室が移動してきてすっぽりと木を蔽うという、極上の待遇を受けていたことにはビックリした。ツバキはもともと「暖温帯の植物であり西ヨーロッパで露地栽培はやや困難で、温室に収容されることが多かった」*1
と中尾さんのいうとおりなのである。
 
蛇足ながら、
「椿姫」をWikipediaでみると、ヒロインの高級娼婦マルグリット・ゴーティエは、月の25日間は白い椿を身に付け、残り5日の生理期間には赤い椿を身に付けたために人々から『椿姫』と呼ばれた、としている。
私は原作を読んでないから、よくしらない。ヨーロッパに行くと、花も大きく豪華になり、また生臭くなる気がする。
 
追って
ツバキは古代に、遣唐使などにより日本から中国に移出され、中国の煬帝の詩に「海榴」という言葉が出てくるのは、ツバキであろうと考察されている。海を渡って渡来したザクロのような花、という意味のようである。中尾佐助氏はこれが日本の文化的輸出の第1ではなかったかとしている。*1
 
 
*1 「花と木の文化史」中尾佐助 岩波新書