雪の結晶(風景の中へ33)

風花やひとひら記憶のジグソーパズル
 
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大寒波の襲来で、北国は一日で1mを越す大雪になっている。わたしの住む暖かい駿河でも雪雲が終日空を蔽い、わずかだが雪片が舞ってきた。
風花。ひらひらと数片のエフェメラル。
 
江戸時代天保6年(1835)に、新潟県魚沼の鈴木牧之が著しヒットした「北越雪譜」に、雪の結晶の図が掲載されている。上の写真で見るように綺麗な図である。ただしこれは牧之自身の絵ではなく、天保3年に下総国の古河の藩主土井利位(どいとしつら)が描いた「雪華図説」からの引用である。よく見ると断り書きがしてあるが、私がそれに気づいたのは、中谷宇吉郎の「雪」(岩波新書)にある記載からだった。
中谷宇吉郎は物理学者で随筆家。昭和11年に北海道大学で世界で初めて人工雪の結晶をつくりだし、天皇陛下の視察も受けている。その実験の成功はウサギの毛を使ったことにあったようで、ウサギの毛にある小さい瘤に核を留まらせて、そこで結晶を成長させた。「雪華図説」を当時の世界の研究と比べても遜色ないと高い評価をしている。
「雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様と言う暗号で書かれているのである。その暗号を読みとく仕事が即ち人工雪の研究である」(中谷宇吉郎「雪」)

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人工雪の実験により雪の結晶の形と温度湿度の関係を解明し、それが有名な「中谷ダイヤグラム」といわれる関係図である。結晶形から雪雲の温度湿度がわかる。
これも手紙の暗号のひとつであり、きっとまだまだいろんな暗号が解読を待っているのだろう。雪国にとっていい秘密情報があれば嬉しいのだが。
豪雪の飯山市で教師をしていた長谷川政春さんの句をひとつ。


前触れもなくて初雪奥信濃