クマ・・・バルトークを聴く

ため息や熊に出遭わず五湖めぐり
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(釧路動物園の大きなヒグマ)

北海道網走で、ヒグマ2頭が現れ、農道を横切り麦畑を猛然と突っ切っていった映像がテレビ報道された。撮影したのはたまたま農道を走ってきた農家の夫婦で、そのヒグマは軽自動車より大きく見えた。
実際、昨年、釧路の動物園でヒグマをこの眼でみたときは、その大きさに息を呑んだ。これに遭遇したら、まず助からないな!と恐怖がわいてくる。
 
恐ろしいヒグマといえば、わたしの頭にうかぶのは、40年も前にオハヨー出版からでている谷口ジローの「大いなる野生」という劇画である。この中で巨大なヒグマが「赤毛」と呼ばれて村人を殺し獰猛ぶりを発揮し、それと戦うアイヌや復讐の鬼となった人間が描かれている。凄惨な闘いの描写は、何か心の奥に沈むものがあって、私はこの漫画本をいまだ棄てられないでいる。
 
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谷口ジロー:「ユーカラの森」から

特に「ユーカラの森」という短編では、猟師が追い詰めた巨大なヒグマが湖に落ちて浮いているものを、舟よりも大きな途方もなく巨大なイトウのような魚が現れ、猟師の目の前でヒグマをひと飲みにするシーンがある。この湖は摩周湖を想像させる風景だったので、実際に摩周湖に観光で訪れたとき、私はこの劇画を思い出し、不快な不安な気持ちになった。
また道東の農道を走っていると、クマが出た場所に看板が出ていて、その月日を記してあって、ひやりとさせられた。知床五湖をめぐるときにも、クマに出会ったときの対応や、昨日はどの辺りで目撃された、などという事前レクチャーがある。
私は知床五湖を半分ほどしか回らなかったが、それでも出口まで戻ったときには、正直ほっとした。
 
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飾りをつけ犠牲に供されるクマ(北方民族博物館:網走市
 
さて今日は、バルトークのクマの曲を聴こう。
バルトークに、「ハンガリーの風景」というオーケストラ曲があり、この2曲目に「熊の踊り」という重厚だがユーモラスな曲がはいっている。一度聴いたら忘れられない曲だ。もともとはピアノの曲であり、「10のやさしい小品」にも譜がある。ロシアなどではクマは親しまれている動物らしいが、この曲を聴くとハンガリーでも同じかなと思わせる。日本でも昔の田舎ではそうだったのだろう。
ついでながらバルトーク弦楽四重奏曲やオーケストラ曲もいいのだが、彼の小品には「珠玉」ともいうべき作品が溢れていて、たとえば手元にある「トランシルバニアの夕暮」とか「シーク地方の三つの民謡」などをきいても、じつに美しくしみじみと心を打ってくる。

次回は、クマ捕りの民謡を聞こう。