最近、ソプラノ歌手のデ・ロス・アンヘレスのCD「Catalan Songs」を聴いていると、最初はカザルスの国連演奏で知られた「鳥の歌」、そして最後は「Els segadors」という歌だった。
「Els segadors」には随分力をいれて歌っているので(もちろん言葉はわからない)、なんだろうと思って調べてみたらカタルーニャ州の「国家」であった。直訳すると「収穫人たち」というような意味らしい。
このとき私は、このCDがカタルーニャ語であることにやっと気がついた。何という鈍感さ。
デ・ロス・アンヘレスはバロセロナの出身である。
ワールドニュースを見るとき、この歌が聞こえてくるかと注意していたが、結局わからなかった。
私は、デ・ロス・アンヘレスの「オーベルニュの歌」がすきで、しかもこの歌を日曜日の午前中に聴くのが一番相応しいと思っている。明るくて品がよくて、なおかつ鄙びているのがいいのである。この歌はフランス中南部に位置するオーベルニュ地方の民謡で、もとはオック語だったと記憶している。その南に地中海に面してラングドック=ルシヨン地方があるが、ラングドッグは文字通りオック語を使う地域の意。ルシヨンはかつてカタルーニャの一部だった歴史があるという。
いずれも、フランス中央政府に吸収された地方なのである。
とすると、この歌を歌うロス・アンヘレスの胸の奥には、カタルーニャに対する思いと似たものがあったのかもしれない。そう考えると、また歌を聴く耳に思い入れがふかくなる。
(20年前バルセロナで買い求めたミロの絵のタイル)
ちなみに、カタルーニャ州は、人口約750万人。これはフィンランド、デンマーク、ノルウェーなどより多い。面積は約32,000km2でこれは、スイスより小さいがベルギーより大きい。九州より小さいが、四国よりだいぶ大きい。この程度の国はたくさんある。GNPは2,236億ユーロで、フィンランド、ポルトガルより多い。カタルーニャ国としての歴史もあり、もちろん芸術でもピカソ、ダリ、ガウディ、カザルスなどをあげるまでもない。
してみると確かに小国ではあるが列記とした国家の体をなす力があるということだ。
独立の気運はヨーロッパ各地にあって、民族と宗教と文化の衝突は人類の厄介な課題だ。クラブチームのサッカーが熱狂的な理由もうなずけるし、逆にスポーツの中にこの衝突が解消される程度ならどんなにいいことか。