静岡おでん

駆け込んでまずふろふきと燗一本

お生まれは何処かと注ぎあうおでん酒

静岡おでん」はB級グルメとして広く知られるようになった。静岡市内には、おでんの屋台を集めた通りが二つあり、最近では観光名所にもなり人気のスポットらしい。私も何度か酔って入っているが、さしたる感動もなく関心外だった。

ところが先日、雪の信州から兄夫婦が遊びに来て、

「おでん街にぜひ行ってみたい」、と言うので「たかが、おでんだよ、あまり期待しないほうがいいよ」と牽制しながら案内することになった。

 

おでん街は、青葉横丁と青葉おでん街の二つがあるが、いずれもかつて屋台で路上営業していたものを集めたという歴史があるという。両方とも15から20軒ほどの店が提灯、暖簾をずらっと並べていて、店は10人で一杯になるというほどのこじんまりしたもの。この狭さが独特の味を醸す。

静岡おでんのちょっと変わっているところは、だし汁が黒いということ。店によってはタネも真っ黒になる。これは醤油のせいでも黒はんぺんを入れるせいでもあるという。でも色は黒いが見た目ほどしょっぱいわけではない。それから魚の粉を振りかけて食べるのが定番。これでタネが香り立つ。やはり寒い夜は温かいおでんは美味い。ついつい酒が進んでしまった。

兄夫婦は興味深そうにいろいろと食べ、女将や九州から仕事で来たという隣の来客と話をして大いに発散したようだ。私も、コロナ禍でしばらく街で飲んでいないので、久しぶりに夜の街を楽しく過ごした。

(黒はんぺん:これはスーパーの普通の品)

で、今晩は家でもおでんをしようと黒はんぺんを買ってきた。これは静岡や焼津周辺のローカル食材で、新鮮なサバなどを頭から全部ミンチにして小麦粉などと混ぜて平に伸ばしたもの。したがって色は黒く、味も歯触りも素朴な野趣があり、香りも高い。もちろん焼いても炒めても美味い。