若草山が燃える(シリーズ風景の中へ9)

1月25日4時頃に若草山の芝生広場に着くともう混雑していて屋台も出て賑やかだった。鹿の糞を踏まないように気をつけながら、たこ焼きを食べたりしている間に陽が落ち暗がりとともに奈良の底冷えが襲ってくる。とこうするうちに法螺貝の音がひびき神官や僧侶・修験者などの松明の列が上ってきて、広場脇の神社でいっとき神事まがいの儀式をした後、大篝火と大花火とシンセサイザーの競演となった。これはなかなか見ごたえがあった。
花火のあと、いよいよ消防団により火が放たれる。
野火は、瞬く間に大きな炎となり山頂向かって燃え上がった。想像していた以上の激しさで、後で聞くと最近10年で一番よく燃えたとのこと。遠く離れているはずの観客席まで熱波が襲い顔や体が火照てり歓声が沸きあがる。奈良盆地一円を照らして大きな炎が山全体を包む。
火は一時間もかからなかっただろうか。短い熱い火炎の祭典。山焼きは江戸時代には既に行われていたようで、東大寺興福寺の用地争いから始まったとの説もあるらしいが、詳細は不明だという。焼き畑農業とも関係はないようだ。この日の人出は18万人だったというから驚きだ。何にしても、火祭りは命を高揚させる。私の血圧も幾分か上がったか。

山焼きの炎(ひ)あかあかと古都を染め大仏様も火照りたもうや

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