山火事や上州名物空っ風
足利の山火事をハラハラしてニュースを見ていたが、1週間してようやく勢いが衰えて来たようだ。この時季の乾燥と強風で、たぶんハイカーの小さな火種が、106万㎡を越す山を燃やした。アメリカやオーストラリアを連想してひやひやしたが、日本は雨が多いので、これまでは大規模にはならなかったのだろう。
民謡には山火事が出てくる。「長者の山」という秋田のポピュラーな曲だ。ここではむしろ好意的にさえ感じられる。ワラビの豊作を期待している。
♪ 山さ野火ついた 沢まで焼けた
なぼか蕨コ ほけるやら
(2段めは、「方言。どんなにか蕨が芽を出すことだろうの意、ホケルは野菜などの薹が立つようになること」「日本民謡集」岩波文庫)
数年前に奈良の若草山の山焼きを見物に行ったことがあった。(写真)
儀式の後、火がつけられると枯れ山はあっというまに全山に火の手が回って、その熱気で観客はたじろいだ。火の粉が真っ暗な空に消えていく。これが延焼を起こさないように、消防などが細心の注意を払っていることは、見ていても理解できた。
焼き畑農業という言葉もあるが、山を燃やす、山が燃えることは、昔は自然なことで、想定内のことなのであって、それを前提に暮らしがあったのだろう。もちろん想定外に拡大したこともあっただろうが。
それにしても、飛び火して拡大する様は怖い。「炎上する」とか「火の粉がかかる」「火が付く」「足元に火が付く」などの言葉が、火事以外で使われるのも分かる気がする。
足下に火が付く、という言葉は、たんに火が身に迫るという意味だけでなく、山土は腐葉土で地面自体が燃えるから、自分の足の下の地面が燃えるという切羽詰まった感じがして、特に政治の世界、永田町などにはぴったりなのだろう。