正月の草津ぶし

元日や湯の香にふかぶか身を委ね

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♪ 積もる思いと草津の雪は 解けるあとから花が咲く

息子に誘われて、草津温泉の正月となった。

この年末年始は、寒気が襲い草津でも例年にないドカ雪になった。しかし昼間は明るい日が射して、まばゆいばかりの雪景色が見られ、背後の白根の山が実に美しかった。でも朝夕はガチに凍りつき、つるつるに道は滑り、ツララも1m近いものも見られ、昼からは屋根から雪が滑り落ちた。

湯畑は、激しく湯けむりを立てていて、何も見えないほどだった。

 

特にやることもないので、名物の湯畑をぶらぶら見て歩き、湯もみのショーと民謡を観て、湯の香漂う温泉街を歩いてまんじゅうを食うだけのこと。宿でもやることがなく食事とお風呂だけ。そのなんでも無さが、ゆっくりとした正月気分にぴったりだった。泉質はたしかに素晴らしい。

 

湯もみのショーは楽しみにしていたのだが、6人の老若女性が唄いながら板でかき回し最後に盛大に湯を撥ね上げるだけのもので、期待が大きすぎたようだ。

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でも、有名な草津節を現地で聞けたので、良しとする。七七七五の都々逸。

鹿島灘の沿岸で歌われていた「げんたか節」という漁師唄が原調と思われる。昭和初年頃流布し、普及したのは大震災後である。」と、町田嘉章氏の解説にある。ちょっと流布と普及の意味がとりにくいが、思ったより新しい。(「日本民謡集」岩波文庫

 

♪ 草津よいとこ 一度はお出で アドッコイショ お湯のなかにも コーリャ 花が咲くよ チョイナチョイナ

この花は、もちろん湯の花をいう。それが店頭にないかと探したのだが、手に入らなかった。看板がみえた店のおばさんに聞くと、「品切れですよ」という。年に数回、町役場が配布するもので、常時あるものではないという。多分湯畑や配管などの掃除を定期的にやって、そのさい出たものを販売するのだろう、と想像した。

 

♪ 草津よいとこ 白根の麓 暑さ知らずの風が吹く

宿の仲居さんの話では、例年 冷房は使わないのだそうだ。それもそのはず、標高は1200mもある。

 

♪ お医者様でも 草津の湯でも 惚れた病は治りゃせぬ

誰もが知っている洒落た秀逸な歌詞。実際薬効は著しく、泉質は日本屈指の「強酸性」で「pH2.1」、1円玉なら1週間、5寸釘は10日程度で溶けてしまうとのこと。そのため皮膚も強力に殺菌される。コロナウイルスも、手洗いで99%消滅すると、湯もみショーで宣伝していた。さもありなん。

 

♪ 浅間山ほど胸をば焼けど 主は白根の雪の峰

深刻な恋の悩みも、さらっと洒落て流すのが民謡の得意わざ。平安時代の恋の和歌、古今集の機知に勝るとも劣らない。中年を過ぎると、こうした歌のよさが分かるようになる。と、思う。

 

私の年明けは、先ず草津節での幕開けとなった。