冷えトマト(New野の花365日)

先日、台風8号が来るというので熟れたトマトを採りこんだ。風でゆすられると、みんな落ちてしまうだろうと警戒したのだが、幸いに私の地域は風も雨も激しくなかった。

といっても、たかがミニトマトを4株ほど植えてあるだけで、このごろ毎朝10~20粒ほどとれるだけなのだが、それでも真っ赤な珠が食卓を飾ると、なんともいえない幸福感を味わえる。

株の一つは黄色のトマトなはずなのだが、あまり黄色くならない。

宮沢賢治の「黄いろのトマト」では、悲しいピュアな兄妹が植えたトマトが実って、黄色くピカピカ光った。兄妹はそれを黄金だと考え、町のサーカスを見ようとしたとき黄金としてそれを差し出すと、切符売りにひどく罵られ、二人は泣きながら帰る。こんな話だが、夢のように漠々として青いオーロラのような悲しさが走る。

私の赤いトマトは、かわいく鮮やかにピカピカ光るので、実は私も内心、これをルビーや赤珊瑚とおなじ宝ものと考えているのだが、惜しいかなこれも流通しない宝石なのである。

 

トマトはフランス、イギリスでは「愛のリンゴ」、イタリアでは「黄金のリンゴ」、ドイツでは「天国のリンゴ」ともよばれる、とのこと。やはりどこかしら幸福感をもたらす印象は共通なようだ。日本では「六月柿」「赤ナス」とも呼ばれたらしい。夢がない!(参考:「日本の野菜」大久保増太郎 中公新書

 

冷えトマト丹波焼(たんば)の大皿湿らせて

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(昔のトマトは大きかった。それを冷やして切って塩を振って食べた。
写真の皿は丹波ではなく小鹿田焼。)