新じゃがとジャガイモの実

新じゃがや飛び出してくる風の中

3月の初旬に、いたずらで埋め込んだジャガイモ。茎が黄色く与太ってきたので、一つを掘ってみた。植えてから100日が目安、と聞いたので、少し早いし、花壇の端っこに埋めた株なので、さあ、期待はあまりできないが・・・。

 

根を引くところころと飛び出してきた。なんとも快感。成果はこんな塩梅で、分量でいえば、約3倍増というところ。まあ実験としては成功と言えるかもしれない。

 

植えてみて知ったことがある。ジャガイモは花は咲くが、実がなるとは思っていなかった。ところが植えた5個のうち、4株は実がついた。緑色のトマトの未熟なものとそっくりな容貌である。しかし硬いし、とても食べられそうもない。

牧野博士の「牧野植物随筆」をひらくと、「現時広く栽培せられているジャガイモには淡紫花の品と白花の品とがあるが、ともに普通は実を結ばない。」ところが「旧くはいった品種にはそれが見られるようだ。そして実はいわゆる漿果(しょうか)ではじめは緑色であるが、・・・それが熟すると軟質となって藍色を呈する。」と書いている。

さて、私の植えたジャガイモは旧くに日本に入ったものの末裔なのかどうかは、全く分からない。この随筆が発行されたのが昭和22年で、70年まえになるので、その後きっと品種は大きく変わっているはずだ。実のなる品種もたくさん出回っている可能性はある。

それにしても、熟すると藍色になると博士は書いているが、これはナスを思わせる。ジャガイモはナスやトマトと同じナス科に属しているので、似たところはあるのかもしれない。そろそろ掘り出して食べたいので、この実が藍色になるまでは、とても待っていっれない。

(ボタニカルイラストで見る 「野菜の歴史百科」原書房

 

サイモン・アケロイド著のイラスト本「野菜の歴史百科」を開いて見ると、しっかり実が描かれている。いも自体は我々が目にするのとはだいぶ違っているが。この本ではジャガイモには数百種類あると書いている。

また、よく見ていると、この本に使われているジャガイモのイラストは、牧野博士の随筆のイラストと、若干の違いはあるが同一物である。牧野博士の随筆にある絵が、博士自身が描いたものかどうかはわからないが、本文中に説明がないので、引用ではないように思える。どうしてこんなことが起こるのだろう。

 「野菜の歴史百科」

 「牧野植物随筆」

 

調べてみると、「野菜の歴史百科」の図版は©Shutterstock であり、適正な使用だと確認される。ということは古い博士の図版に手を加えられた物が、企業の商品になっているのかもしれない。詳細はよく分からない。

 

(「漿果」というのは、皮は薄く、中は水分が多い柔軟な組織からなる肉果となるものでトマト、ホオズキ、ブドウなど食用とするものが多い。液果の旧称などと説明されている。)