ナンジャモンジャってなんじゃ?

真白きは噂の花かナンジャモンジャ

 

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先日、ナンジャモンジャが満開だと聞いて、近くの沼の公園に見に行った。シュレッダーで切った紙のようちらちらした白い花が、豪勢に咲いていて一見の価値はあった。木の下で花見のお昼をしている人もいた。

 

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この奇天烈な名前の花は、私も昔から耳にはしていたが、最近あちこちに植樹されて、珍しい花ではなくなってきた。静岡近辺でナンジャモンジャと呼ばれているのは、本名がヒトツバタゴ(一葉タゴ)という木のことであるが、さて全国的にみると、いろんな木がそう呼ばれたらしい。牧野富太郎博士が、「ナンジャモンジャの真物と偽物」(講談社学術文庫)で詳しく説明していて面白い。

 

江戸時代から有名だったナンジャモンジャは、千葉県神崎町の神崎神社の御神木であるという。そしてこの木がナンジャモンジャの元祖、ご本家である。

千葉県教育委員会のホームページでは、次のように書かれている。

 この木は古くからナンジャモンジャとして有名である。水戸光圀が延宝2年(1674)にこの神社を訪れたとき、「この木は何というもんじゃろうか」と自問自答したことによるといわれているが、実際にナンジャモンジャという名が広がったのは、文化・文政頃の庶民の旅ブームにのってのことである。

 

江戸末期安政5年(1858年)に発行された、赤松宗旦の「利根川図志」にもこの木は挙げられていて、宗旦は「いと年経たる桂の木」としている。これに反し牧野博士は、現地に実物も調べて、ナンジャモンジャの正体はクスノキと断定している。宗旦の図と牧野博士の図を並べてみたが、私には区別がつかない。

 

f:id:zukunashitosan0420:20210429143140j:plain   赤松宗旦「利根川図志」

f:id:zukunashitosan0420:20210429143255j:plain 牧野富太郎博士

 

牧野博士は、ナンジャモンジャの偽物を列挙しているが、その第1のやり玉に挙がっているのが、私が見に行った、件のヒトツバタゴである。かつて東京の青山の原に大木があって、珍しいものだったが、ある時から誰かがナンジャモンジャと呼び出して、今では学者もそう呼ぶ有様だと博士は嘆いている。

第2は筑波山にあるアブラチャン、第3にヤブニッケイ、第4には紀伊那智の入口にあると古書にかかれているシマクロキ、第5に三島市三島神社境内にあるカツラで、昔将軍家よりお尋ねの節、宮司これをナンジャモンジャとお答えしたとかいう伝説がある。第6に埼玉県東松山市の箭弓街道際の畠中にあるイヌザクラ、第7はバクチノキ。以上をあげ、さらにまだほかに詮索すれば出てきそうだが、としている。

 

牧野博士のこの本は、1947年に発行されたものなので、70年前の記事であるから、今日一般的に、ヒトツバタゴがナンジャモンジャと呼ばれている状況を見れば嘆くに違いない。けれど、ナンジャモンジャは、実はクスノキなのだ、と言っても何も面白くないことも事実なのだ。

私は、三嶋大社なら行くことができるので、今度参拝したらこの偽のナンジャモンジャ(カツラの木)も探してみようと思っている。