羽化できないものたち!

蝉の羽化は、皆な子どものころ、見たことがあるのではないだろうか。
夕方這い出した蝉の子を探して捕まえる。蝉の子は、ひんやり湿っていて、意外に重く、手にずんと応える。
部屋のカーテンなどにつかまらせておくと、暫くうろうろした後、羽化を始める。
背が割れて頭を出して、弓なりになって手足を抜き、そのあと縮んでいた羽を震えながら伸ばす。白くてうっすら緑がかっていた羽は次第に大人の羽になっていく。
この劇的変態の不思議を、子どもらは目を見張って凝視する。そんな場面が夏休みの思い出にあるのではないだろうか。
私は昆虫少年ではなかったけれど、長じて、ゲンゴロウタガメなどの水生昆虫の飼育に夢中になった時期があった。飼育してはじめて、羽化や脱皮がとてもリスクの大きい、文字通り命を懸けた営みであることを知った。記憶ではゲンゴロウの羽化の成功率は5、6割だったと思う。
なんとか変態しても羽がまっすぐにならなかったり、体の一部が脱皮できない例がたくさんあった。羽化に失敗し片側の羽が短くて飛べないヤンマに、半月ほど餌をやって育てたこともあった。
羽化できないものたちには、死しかない。変態途中の死に様は、異様にグロテスクで身に応える気がする。
庭でも、よく見ていると、この写真のように、羽化できないものたちを目にすることがある。

空蝉や離さぬとばかりに枝に爪
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左上は羽化に失敗、なぜか腹か鉤爪が抜けないうちに、
体が固まってしまったか。右は参考で正常な抜け殻。