落人伝説椎葉村で離合困難?(シリーズ風景の中へ20)

椎葉村と言えば、山奥、平家の落人、稗つき節、柳田國男。漠然とこんな知識しかなかったが、以前ちょっと話題になった89歳の女性作家の「見残しの塔」を読んで、ふと行ってみようと思い立った。室町時代に山口の瑠璃光寺の塔を建設した宮大工の話で、主人公は椎葉村の若者である。
高千穂町から五ヶ瀬町を過ぎて椎葉村に入ると、国道265号は文字通り狭隘な山道となり、急斜面を削りながら、山の奥へ奥へとのびている。
そのあたりで、目にした標識が「離合困難」。
ん?・・・と思いながら、「すれ違いができないことかな」と解釈して走らせる。椎葉村は実に広く、山道が長い。だが村を通過するまでに、すれ違ったのは数台だけだった。お互い上手にかわしてバックすることもなかったが、私の神経は磨り減ってしまった。いまどきこんな国道がある!(ちなみに、388号で熊本県にはいると直に道は広くなる、これは県力の違い?)
「離合困難」・・・中部地方では見かけたことのない言葉だった。

小説「見残しの塔」では、主人公が村を出て五ヶ瀬に向かうに、白岩山や向坂山付近の尾根を越え、丸一昼夜かかった様子が描かれている。私はここを国見トンネルで通過してきた。また村の中心部にはダムができていたので「主人公の部落は埋没したかもしれない」、などとありもしない想像をしていた。

村では平家落人伝説をつたえる鶴富屋敷を見て民俗博物館を見て、豆腐の味噌漬けを買った。物産売店のおばさんに尋ねると、
「作家のおばさんはこの春も村に来てました。かくしゃくとされてますよ」

椎葉村離合困難山径(みち)青葉
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(民俗博物館から村の中心街を見る)