せみ時雨

蝉時雨鳴き尽くしては死ぬばかり
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ヒグラシの涼しい林
熱い家を逃れて、車で10分ほどの林道に行ってみたら、27度で、涼やかな風が吹いていて、good !
4,5時間ここで昼寝をして、笛を吹いて、発声練習をして・・・あとは蝉のこえを聞いていた。一応、熊が出たときの逃げ方のシュミレーションもしておいた。
こんなに、白紙の状態になって、徹底的にぼんやりしたのは久しぶりだ。

森は大雨が降るような蝉時雨。この森は大方がヒグラシだ。
カナカナ、と一匹で華麗に鳴くのも物寂しいものだが、今日はどしゃ降りで競い合っている。これがてんでばらばらに鳴いている、と思いきや、聞いていると何百というヒグラシは、波のように一斉に鳴いて、一斉に間を取る。強弱がそこに生まれ、ある種の命のリズムがある。打ち合わせたわけではなく、自然のもつ不思議なリズムなのだろう。それは太平洋の磯の、波のみちひきのリズムをおもいださせた。

3時頃、ヒグラシがこれもまた一斉に、ぱったりと鳴きやんだ。すると今度はツクツクボーシが、いままで大人しくしていたのだろうか、一斉に鳴き始めた。それが10分ほど続くと、またヒグラシがカナカナ!と叫びだし、法師を黙らせてしまった。今日は、ヒグラシが優勢のようで、それは私が帰る夕刻まで続いていた。

(ちなみに、ヒグラシはとても声がいいのだが、その声を出すために、体のほとんどは共鳴板と化し、彼の肉体の中は空っぽなのだという。これもまた、華麗だが悲しい補陀落渡海である)