餓死した皇軍兵士

皇軍は餓死せりと知る盂蘭盆
 
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中公文庫の「日本軍兵士…アジア・太平洋戦争の現実」という本を手にした。著者の吉田裕氏は、兵士の目線、立ち位置から「死の現場」を再現しようと試みた、と書いている。
 
本では、この大戦の後半、著者の言う「絶望的抗戦期」(1944年8月~1945年8月)における、兵士たちの置かれた過酷な状況が細かに書かれていて、その凄惨さに今更ながら憤りと悲しさが湧いて来る。およそ皇軍などという言葉の響きとはかけ離れ、兵士のおおくは尊厳・名誉とは程遠いむごい死だった。
私の叔父の一人は昭和19年マリアナに沈んでいる。どんな死だったのか、思いやるさえ痛々しい。
 
特に、餓死(栄養失調)の記述は、いたましい。
その数は明確ではないが、140万人(61%)(藤原彰氏説)、37%(秦邦彦氏説)という世界の戦史上例を見ない異常な高率であったという。
死者のうち直接戦闘で弾丸に当たり死亡するのは、35~40%ほどで残り65~60%は病死、しかも病死のうち悪疫によるものは半数以下で主体は悪疫を伴う餓死であった、という資料もある。(同書31~32p)
これは日本軍の補給路が完全に断たれ深刻な食糧不足が生じたためだった。この惨状に栄養失調にマラリアが容赦なく追い打ちをかける。
我々の祖父や親たちは、食うものもないまま、死の行軍を、死の戦いを命令されたということだ。
 
昨年、NHKの特集でアメリカによる無差別空襲、原爆の開発、インパール作戦などのドキュメントを見て、つくづく人間が嫌になった気がしたものだ。
「1将なって万骨枯る」言葉のとおり、国民の命は牛馬の如く扱われた。この嫌悪感は、最近の日大、ボクシングなどのスポーツ界の体質に感じると同じものだ。
 
以下、備忘のため基本的数字を本書から抜き書きしておく。
 
〇日本の戦没者数は、日中戦争も含めて軍人・軍属230万人、外地の一般邦人30万人、空爆などによる国内戦災死没者が50万人、計310万人。
〇しかもこのうち、1944年以降の死者が9割。終戦を延ばし延ばし、いかに無謀な犠牲の多い「抗戦」を国民は強いられたか。
アメリカ軍の戦死者は9万2千から10万人。
ソ連軍は、張鼓峰事件、ノモンハン、対日参戦以後の計2万2694人。
〇イギリス軍が2万9968人、オランダが民間含めて2万7600人。
〇統計がないが、中国軍と民衆の死者1000万人以上、朝鮮20万人、フィリピン111万人、台湾3万人、マレーシア・シンガポールが約10万人
〇その他ベトナムインドネシアを含めて、総計1900万人以上になる。
(同書34p)