禅寺にも淑気

禅僧の青き頭の淑気かな
 
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静岡の臨済寺は臨済宗の禅の修行寺である。
戦国時代に東海地方の雄であった今川義元菩提寺でもあり、徳川家康(当時竹千代)が人質となり、この寺で幼少時を過ごしたことでもよく知られている。竹千代の小さい部屋も残されている。
現在の仏閣は家康の普請となり歴史の古いのものであるが、しかし普段は門を閉ざしたまま余りマスコミにも露出することはない。
市民が入れるのは、年2回の特別な拝観日だけに限られる。年末年始も人を寄せ付けない静かさである。格調高い寺なのである。
 
だが元日、たまたまこの近くを通ったら、特別参観だという看板が出ていた。摩利支天の像がイノシシ年に関係があるので、特別公開だという。

これは新年早々縁起がいいわい!
と思って境内にはいると、摩利支天を祀っている座禅の修行堂が解放されていた。説明するお坊さんの話を聞くと、この摩利支天の神はイノシシに乗っているのだった。
摩利支天は戦の神である。家康はこの神が好きだったようだ。
 
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(イノシシに乗る摩利支天)

お坊さんの説明を伺うと、この臨済寺では一日中体を横にせずに座禅をしたままの修行を7日間行うという。その座禅の場が、この摩利支天のお堂なのである。
一日座ったままでいると、やはり意識がもうろうとしてくる。すると警策という棒でたたくのだが、その叩き方を座布団を相手に実演してくれた。それはびっくりするほど力いっぱいなもので、布団はバーンと大きな音をたてた。怪我が心配なほどなのだ。棒は何本も折れてしまうのだそうだ。

やはり上手に叩かないと痛いのですから、経験のある僧が叩く役を務めます。
ということだった。そうだろう。
 
はからずも正月らしい、凛として厳粛でかつどこかめでたい気分(これが俳句でいう「淑気」だろう)を味わうことができた元日だった。