石の夢想ー2 (鈴石)

石は石草また萌えても石のまま
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今回は「鈴石」。
実はこの石を、私は10年ほど前に本で知り探してみたが見つからないで諦めていた。ところが先日、たまたまあるサークルで知り合った人と話をしていたら、この石が話題に出てきた。早速場所を教えていただいて、翌日嬉々として見に出かけた。
それはすぐに見つかった。何のことはない、今まで足を向けなかった林道の脇に、堂々と立っておられた。位置は、静岡市東の小字石神付近である。
 
大きな蛸の頭の形で高さは6m、幅4mほど。不思議なのはその真ん中に30㎝くらいの穴が開いていて、「その穴に賽銭を入れると、七日七夜鈴の音が響いていたというところから、鈴石天神と人が呼ぶようになった」(「麻機誌」)とのこと。小字の石神もここからきていると思われるが、石の穴に感じた不思議が、神そのものなのだろう。素朴な神である。
 
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(これが穴。内部がどうなっているのか不明)

たしかに、奇妙に穴が開いている。
鈴石天神は、現在は別の神社に合祀されて祠も社もないが、きれいに清掃され、ワンカップの酒が供えられていた。麻機誌の書かれた昭和50年ころは、この穴が埋まってしまっているように書かれているが、現在はきれいに保護されている。
 
しかし、鈴石というと、一般的にはまるで別のものを指すようだ。
石好きが高じて京都に「益富地学会館」を立てられた益富寿之助さんに「昭和雲根志」という面白い本がある。それによれば鈴石は「粘土等を核とする褐鉄鉱質結核」とされていて、厚さ5~10mmほどの褐鉄鉱質の殻をもち、中が中空で粘土や砂や小石が入っていて、振るとコトコト、シャリシャリなどの音がして、驚くのだという。大きさは爪の先からこぶしくらいまでだという。いわば鶏卵に何か石が入っている感じだろう。
くわえて、中国では古くから「禹余粮」とよばれた漢方薬の材で、それが正倉院にも伝わって残っていたこと、北海道の名寄には鈴石が産出し天然記念物に指定されていること、アイヌが薬として使っていたらしいこと、鈴石モナカというお土産品があること、などが紹介されていてとても面白い。
こういう鈴石を、私はまだ見たことがない。
 
古来ウツボ船で訪れる神々の例のように、中空のものは夢と不思議を人に与えてきたようだ。これが硬い石なら不思議はなおさらのことだ。
しかし、写真の鈴石は、神様というより水木しげるの愛すべき妖怪に近い感じがする。
私流にいわせれば、「ダイダラボッチの石笛」といったところか。静岡の山中にはダイダラボッチの伝説が伝えられているのだから。大きな音が響きそうだ。