蜂の巣や小さき匠の腕たしか
クーラーの外扇機の上に、いつの間にか、小さいトックリ壺が置かれていた。まるでおとぎ話のようだ。形はしっかり整えられているし、素焼きっぽい肌合いも面白い。大きさは1.5㎝くらい。しっかりくっついている。
実はこれ、ハチの巣。
これを作るのはミカドトックリバチという蜂らしい。中に卵を一つ産み入れて、そして餌となる麻酔された青虫などを何匹も入れて、蓋をしてあるのだとのこと。見かけの可愛らしさに反して恐ろしい悪魔の壺なのである。
私は製造中のところを見ていないが、それにしても巧まずしてこうした美しいフォームを作り出す生物の本能には恐れ入る。この壺の形も、人間がろくろで引き上げるようなものではなく、横面を下に据えて傾いたまま練り上げている。この自由な意匠は花壺などを作るときに参考になるかもしれない。
こちらは、この春あるお寺の本堂の廂に見つけたトックリ。
これはコガタスズメバチの巣、かと思われる。廂にはスズメバチの巣を取り払った跡も見えるので、毎年蜂が巣作りをする場所かもしれない。
これも蜂の巣らしいが、何という蜂か私にはわからない。
ドロバチの仲間だと思われ、これも中に餌となる生きた幼虫が入れられていたのだろう。これは去年のもので、巣から出た跡がないので、育たなかったのかもしれない。これは硬くそのまま壁にくっついている。