干す醂(さわ)す渋柿相手にひと日暮れ
この時季はカキが美味い。
句に書いたとおり、渋柿を買ってきて一部は干し柿にした。といっても今年は20個くらいだから、季節を感じるためにカキを吊るしているという程度の量である。カキは秋の日を浴びて萎み、徐々に甘く柔らかくなっていくのが不思議で楽しい。
大きなカキ数個は焼酎で醂(さわ)した。これは焼酎を吹きかけてビニール袋に密閉するだけのこと。これまた、醂(さわ)すという言葉を使いたい、ためにする、気持ちも半分はある。事程左様に、あそびなのである。
醂したカキは、トロトロになる。こういう熟柿でなければ、という人と、少し歯ごたえがあるほうがいいという人が居る。私は熟柿派である。
くやしくも熟柿仲間の坐につきぬ 一茶
老人は歯が悪いので、堅い柿は噛めない。と注釈がある。*1
もいではすする熟柿のぬくとさは 山頭火
カブリツク熟柿ヤ髯ヲ汚シケリ 子規
山頭火は歯がボロボロだった。子規のカキ好きはよく知られているが、この句は死の前年の作、すなわち食い納めの年だった。子規はまだ歯はしっかりしていたように伺えるが、どうだったのだろう?
私は?もちろん歯はガタガタである。
*1 「一茶俳句集」の1346 岩波文庫