カキを干す、醂(さわ)す

干す醂(さわ)す渋柿相手にひと日暮れ

 

f:id:zukunashitosan0420:20201028221122j:plain

この時季はカキが美味い。

句に書いたとおり、渋柿を買ってきて一部は干し柿にした。といっても今年は20個くらいだから、季節を感じるためにカキを吊るしているという程度の量である。カキは秋の日を浴びて萎み、徐々に甘く柔らかくなっていくのが不思議で楽しい。

 

大きなカキ数個は焼酎で醂(さわ)した。これは焼酎を吹きかけてビニール袋に密閉するだけのこと。これまた、醂(さわ)すという言葉を使いたい、ためにする、気持ちも半分はある。事程左様に、あそびなのである。

f:id:zukunashitosan0420:20201028221421j:plain


 醂したカキは、トロトロになる。こういう熟柿でなければ、という人と、少し歯ごたえがあるほうがいいという人が居る。私は熟柿派である。

 

くやしくも熟柿仲間の坐につきぬ   一茶

 

老人は歯が悪いので、堅い柿は噛めない。と注釈がある。*1

 

もいではすする熟柿のぬくとさは   山頭火

 

カブリツク熟柿ヤ髯ヲ汚シケリ   子規 

 

山頭火は歯がボロボロだった。子規のカキ好きはよく知られているが、この句は死の前年の作、すなわち食い納めの年だった。子規はまだ歯はしっかりしていたように伺えるが、どうだったのだろう?

私は?もちろん歯はガタガタである。

 

*1 「一茶俳句集」の1346 岩波文庫