ロ短調ミサ曲(J.S.バッハ) (シリーズ♪ロ短調 1)

冒頭のトゥッティ、ロ短調のキリエが一瞬にして聴くものの心を奪う。悔悟と悲哀と法悦とを同量混ぜ合わせたような不思議な響きで、私はこれを聴くたびに、早朝の深い霧の中、高山の急峻な崖をトラバースしている気持ちにとらわれる。
旋律はバッハのオリジナルかというと、どうやらそうではなく、ルターの制定した「ドイツ・ミサ」によるものだと「バッハ事典」(東京書籍)には書いてある。が、いずれにせよこの数小節だけでも音楽史に残るほどの魔力があると思える。
 
先日、浜松アクトシティでバッハのロ短調ミサ曲をきいた。合唱団は40人ほどで、磐田古楽協会・磐田バロックコアという市民団体。4人のソロと15、6人の古楽器オケはプロを頼んでいるようだ。地方都市の演奏と侮ることはできない。2時間に及ぶこの大曲を実に高いレベルで演奏しきって、圧倒的な感動に拍手が鳴り止まないのだった。
私はすばらしい名曲を聴けたし、地方の団体が頑張っていることに新年からすがすがしい感動を覚えて嬉しかった。
 
(音楽の評、解説は巷に溢れているので、何か新奇なことがいえるわけではないが、個人的な思いを少しずつ書いていこうかな、と思う新年。)
 
わが胸の底の奥なる火も水も沸き鎮まらずロ短調ミサ
 
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開演前のアクト中ホール