#クラシック

古いレコードプレーヤーの再生

歳月も人もアナログ春の果て 息子が古いレコードプレーヤーを直してくれた。 DENONのDP-1200という代物で50年前に安月給でやっと買ったものだ。高級ランクのものではないが、壊れてからも捨てないでそのまま置いておいた。それを持ち出して直してくれたのだ…

「千と千尋の神隠し」とハイドン

八月やピアノを撃(たた)くバルトーク ハイドンのピアノソナタを流していたら、あれ?!というメロディーが聞こえてきた。Ⅾ major・Hob.XVI: 19(ソナタ第19番)の第2楽章、Andanteである。 この曲が、「千と千尋の神隠し」のなかに出てくる「いつも何度でも…

FM「古楽の楽しみ」が「基礎英語」に!

(今日はびっくりして、俳句が追いつかない) おや?と思った。 早朝に5時過ぎにNHKFMをつけたら、「古楽の楽しみ」をやっている。これは6時からのはずだが?と番組を調べたら、なんと、4月から5時開始に変更となっていた。6時の代わりの番組は、「中学…

秋の些事(2)相思鳥(ソウシチョウ)

小鳥見る地蔵となりて小半時 (まだぼんやりしている) バーンと音がして、ガラス戸に小鳥がぶつかったようだ。 急いで庭を見ると、きれいな小鳥が落ちている。くちばしの色が明るいバーミリオンだ。まだ息はあるようで、細い足を突き上げたりする。寒さで死…

アルビノーニのアダージョは現代曲だった

礼拝堂足踏みオルガン蔦紅葉 AOIのオルガン 静岡駅前にある音楽ホール「AOI」には、立派なパイプオルガンがある。ホールによれば、フランスのアルフレッド・ケルン社の製造で、41ストップ、パイプ総本数2,868本で、手鍵盤3段と足鍵盤を備えており、バロッ…

バロック音楽の皆川さんに

うしろより見る三月の去りゆくを バロック音楽のラジオ番組「音楽の泉」の終わりに、解説の皆川達夫さんが一言、退任のご挨拶をされた。「92歳になりました」「さようなら」とおっしゃられたときには、私の中で何か一つの時代の幕が下りた感じがして、思わず…

SDGsじゃなくてSDG

最近よく目にするSDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称だという。国連が掲げたもので、17の大きな目標と169の具体的なターゲットがある。 この略称はあまり好きではないが、世界の貧困と飢餓の撲滅、教育の確保、健康や水…

音楽ストリーミングサービス なるもの

冬籠りこのスピーカーとも五十年 (探すに一苦労の雑然としたCD棚) IT音痴の話。 息子が家に来て、積み重なった私の本棚やCDの棚を見て言う。 「親父が亡くなったら、俺がこれを処分するのか?」 まあ多分そういうことだろう。と、私は心の中で思う。 そ…

思い出のCD(アンナー・ビルスマ)

貧しきは幸いなるか聖夜凍む 古楽演奏の大家、アンナー・ビルスマが今年亡くなった。ピッコロチェロという小型のチェロを弾き、さわやかな演奏を聴かせてくれた。 私は彼のCDを2,3枚持っているだけで、熱心なファンという訳ではないのだが、忘れられな…

ベートーベンの「寒月ソナタ」

寒月や隠れ処無し樹も我も 煌々と月が照っている。今宵は満月で辺りも異常に明るい。世界がくっきり見えている。 疑うらくはこれ地上の霜かと これは李白だったが、今夜の月はこんな詩を思い起こさせる。確か李白は、 頭をたれて故郷を思う のだったはずだ。…

バッハへの旅ー6 (バッハの死後)

バッハの伝記はたくさん書かれているが、多くはその死をもって閉じられ、死後の家庭について書かれているものは少ない。礒山雅氏が「J・S バッハ」の中でそれについてわずかに触れているのが、私の眼についたぐらいである。 意外にも、バッハの名声にもかか…

バッハへの旅ー5 (アイゼナハ)

アイゼナハは人口約4万人、チューリンゲンの森に囲まれた小さい静かな町だ。 旧東ドイツだが西ドイツ境界に近く、ガイドの話では多くの住民が西ドイツに逃亡したとのこと。町を歩くと廃墟然とした家が残されていて、それは西ドイツに逃れた人々の家で、住ん…

バッハへの旅ー4(古都ドレスデン)

バッハはドレスデンに住んだことはなかったが、ゆかりの深い街である。 ドレスデンは南ドイツの雄、ザクセンの州都で、バッハの時代すでにエルベ川のフィレンツェと呼ばれたほど、美しくまた流行の先端をいく文化都市だったようだ。 (再現された古都 右奥が…

バッハへの旅ー3 (ヴァイマルのバッハ)

(ヴァイマルの中央広場) ワイマールといえば、ワイマール憲法とワイマール共和国。教科書的にいえば第1次大戦に敗北したドイツが1919年につくった政治体制だったが、多額の賠償金、不況、そしてヒトラーの出現により1933年には事実上崩壊している。 今はチ…

バッハへの旅ー2 (サン・スーシ宮殿:ポツダム)

ポツダムのサン・スーシ宮殿。 ここはプロイセンのフリードリッヒ大王の館であり、この大王は大の音楽好きで自身もフルートが大変上手く、毎晩というほどここで演奏会が開かれていたという。 ヨハン・セバスチャン・バッハがここを訪れた逸話はよく知られて…

バッハへの旅ー1 (聖トマス教会)

聖トマス教会訪ね入りたればオルガン響く滝つぼのごとく (こちらは教会の祭壇の裏側にあたる、正面は反対の西門) いつかは訪れたいと思っていたバッハゆかりの地を、ツアー旅行で足早に一回りしてきた。ベルリン、ドレスデン、ライプチヒ、ワイマール、ア…

半音階的幻想曲

バッハの「半音階的幻想曲とフーガニ短調」BWV903のまさに冒頭。 私はメロディーを追う程度しか楽譜がわからないのだが、この譜を見るだけで芸術的な刺激を感じてしまう。ほとんど絵画ですね。(シュトックハウゼンを想起するね) 地震で被災した子どもたち…

女性バイオリニストのソチオリンピック(シリーズ♪ロ短調 3)

バネッサ・メイという有名な女性バイオリニストが、ソチオリンピックに出場したことは、知る人ぞ知るニュースであった。彼女はシンガポール生まれの英国人だが、タイから、アルペン女子大回転に出場。結果はどうだったのか、知りたくていろいろネットを調べ…

くわせもの作曲家ーまたはバッハの偽作(シリーズ♪ロ短調 2)

最近、佐村河内何某という詐欺師が世間を騒がせているが、実に不愉快な偽作事件だ。耳が聞こえるのか聞こえないのかという茶番まで付随している。疑いを知らない純情な音楽ファンをオレオレ詐欺に引っかけたようなものだ。彼の名は、この不潔な食わせ事件の…

ロ短調ミサ曲(J.S.バッハ) (シリーズ♪ロ短調 1)

冒頭のトゥッティ、ロ短調のキリエが一瞬にして聴くものの心を奪う。悔悟と悲哀と法悦とを同量混ぜ合わせたような不思議な響きで、私はこれを聴くたびに、早朝の深い霧の中、高山の急峻な崖をトラバースしている気持ちにとらわれる。 旋律はバッハのオリジナ…