思い出のCD(アンナー・ビルスマ)

貧しきは幸いなるか聖夜凍む

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古楽演奏の大家、アンナー・ビルスマが今年亡くなった。ピッコロチェロという小型のチェロを弾き、さわやかな演奏を聴かせてくれた。

私は彼のCDを2,3枚持っているだけで、熱心なファンという訳ではないのだが、忘れられない一枚がある。

Vivarteから出した、「ビオラダガンバのためのソナタ」というCDで、バッハのBWV1027,1028,1029が入っている。ボブ・ヴァン・アスペレンがオルガン伴奏をしていて、これも小型のオルガンを鳴らしている。ビルスマのピッコロチェロの軽快な音と小型オルガンのちょっと素朴な感じの音とのハーモニーが、それ以前のバッハの厳かなイメージとはかけ離れていて、明るくて実に心地よい。それでいて気品にあふれている。

で、直ちにこの一枚は私の傑作名盤に加わり、愛聴することとなった。1990年オランダでの録音だから、もう30年も前の盤になるが、それ以降これに敵うものを聴いていない。実はこの演奏を聴くまでは、dhmから出ていたクイケンのガンバとレオンハルトチェンバロによる演奏が素晴らしくて、もうこれ以上のものは出ないだろう、と思っていたのだった。

 

今年秋、古楽の愛好家で造詣も深かった友人が逝ってしまった。大学時代を過ごした仙台の「無伴奏」というバロック茶店に二人とも関わったという縁もあって、よく昔の話に花を咲かせたものだった。

夏に見舞いに行ったとき、私はこの愛聴盤のビルスマのCDを彼に渡した。その後電話がきて彼は、なかなかいい盤だね。と言ってくれた。「返さないでいいよ」と私は返事をした。