春はクラリネット(♪シリーズロ短調10)

春の宵クラリネットに指白し
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いつも古楽ばかり、偏向して聴いているので、クラリネットはあまり聴いたことがなかった。
半年ほど前、CDでウェーバークラリネット五重奏曲を聴いて、その不思議な魅力に、いまさらながら驚かされた。演奏はポール・メイエのクラリネット、カルミナ四重奏団。美女ザミーネ・マイヤーの30年ほど前のCDも購入して、最近の私のお気に入りになっている。

この曲が、JR清水駅近くのホールで演奏されるというので、恐る恐る行ってみた。「恐る恐る」というのは、どんな力量の団体か知らなかったからである。デリリウム トレーメンス弦楽四重奏団という名で、清水地区のノンプロの団体、年一度ほど定期演奏会をしている、くらいしか情報がない。
ところが、本当にレベルが高く、熱演だったので驚き感激した。
プログラムはモーツァルトの「狩」、ウェーバーの「クラリネット五重奏曲」、ベートーベンの「ラズモフスキー第2番」。はじめは硬そうだったが、尻上りに調子が出てきて、そのひたむきさが伝わってくる。

件のクラリネットは若い細身の女性だった。こんな名人芸的な曲をやすやすとこなし、地方でも演奏の能力はこんなに高いのかと、全く実情を知らない私は驚いた。
クラリネットの音色は、鋭い鳥の悲鳴のような高音から、曖昧でやさしい中音域、不思議な同性愛的な低音と、実に複雑な表情をしている。このクラリネット五重奏曲は、あるときは泣かせあるときはくすぐったり笑わせたりする色々な情感、駆け上がり滑り落ちる早いパッセージ、めまぐるしい旋律の変化で、聴いている人はまるで渦の中に落ち込んだようになる。
私が解説するのもおこがましい。とにかくたっぷりと堪能させてくれた。
これで千円というのも驚きかつ心配。こうした活動を応援したくなる。