イネ科は苦手ですー2 (ススキとオギ)

業平の峠を塞ぐすすきかな
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(オギの穂のなびき:茎は一本立ち)
 
ススキとオギは区別がつけにくいが、私は、湿地に生えていて、一本ずつ真っ直ぐに立っているものを、まずオギだろうと考えるようにしている。これに対してススキの生えるのは湿地ではなく、また花穂はオギのように一本立ちではなく株状に一所からやや放射状に広がる。花穂もオギのほうがより白く明るくて大きい。
いずれも穂が風に揺れる風情、夕日に色づく風情は、日本の秋を代表するものだろう。
 
それにしても、日本人のススキに対する思い入れは、並大抵ではない。桜井満氏は「万葉の花」の中で、ススキは竹と同じで茎が中空であり、中空の植物には神霊が宿るという信仰があると指摘して、8月の十五夜にススキを立てるのはそれが神霊の依り代と見られるからだとしている。そういわれれば幣やアイヌのイナウに似ているといえる。そんな信仰心もススキ好きの背景にあるのだろうか。
 
よく引用される枕草子第67段には次のようにある。
秋の野のおしなべたるをかしさは、薄こそあれ。穂先の蘇枋(すおう)にいと濃きが、朝霧に濡れてうちなびきたるは、さばかりの物やはある。
 
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(初々しいススキの赤い穂 ちょうど花が咲いている、これが真白になる
茎が放射状に広がるのが分る)

「穂先の蘇枋(すおう)にいと濃きが」とは、よく見ているなと思わせる。たしかに穂の出始めは赤茶色っぽくしっとりしてる。清少納言は宮廷の庭に植えられているものを、細かに観察していたのだろう。
ちなみに蘇枋(すおう)というのは、木の名前で、またそれを染料に用いた色であり、紫がかった赤色、黒みがかった紅色なのだという。
 
私も「穂先の蘇枋(すおう)にいと濃きが」を見ようと、お昼前に野原に出かけると、もう朝露に濡れてはいないし、その上だいぶ穂も開いてしまい、色が「いとうすき」状態になっていて、上のような写真しか撮れなかったが、雰囲気は伝えられるだろう、か。

 
(句の業平の峠は、伊勢物語の宇津の谷峠のつもりである。)