穂に出でて風におどろくススキかな
ススキが美しい季節だ。
一つ一つの穂花もいいし、群生して風に波打つのもいい。古来日本人がこの姿を愛でてきたのも納得できる。しかも屋根をふくにも欠かせないものであればなおさらである。
枕草子64段は知る人も多いだろう。
秋の野のおしなべたるをかしさは、薄こそあれ。
穂先の蘇枋にいと濃きが、朝霧に濡れてうちなびきたるは、さばかりの物やはある。
秋の果てぞ、いと見所なき。
穂先の蘇芳に・・・とは、呆けた白ではなく若い少し赤身のある色がいいというなかなか繊細なところ。こんな風情を探して、私も以前から野に行くと気をつけて見ている。なかなかこれっ!というものには当たらない。
写真は朝ではないが、少し彼女の言う雰囲気に近い色かな。
(参考:蘇芳という色)
万葉集でもたくさん詠われている。「万葉植物新考」を開くと、「すすき」が17首、「おばな」が19首、「かや」が10首でこれらは同じものなので、合計46首としている。
けれどすすきとおばなでは、幾分ニュアンスが違うようだ。すすきは、穂に出でてなどと使われることが多く、これは若い出穂のころの花穂。一方おばなは開ききって視覚的に白く輝いているニュアンスだと指摘する説もある。憶良の秋の七草の歌では、おばな、である。
万葉集巻14は東歌。こんな歌もいい。
かの児ろと寝ずやなりなむ はだ薄宇良野の山に月片寄るも (巻第14 3565)
・・・あの子と寝ずに今夜もすぎるのかなあ。はだススキの末靡く宇良野の山の端に、月も傾くよ。