やぶかんぞうの色

空には火輪(ひ)原には熾(お)き火藪萱草(やぶかんぞう)
 
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(土手から採取して庭に鉢植え)

堤防や河川敷の緑が、一段と濃くなったが、その中にまるで炭の熾き火のように赤いものが点々と見える。ヤブカンゾウだ。
暑苦しい時節に、遠慮なく暑苦しい色で咲いている。この痛快な咲きぶりもいいなと思う。
 
炎天の下、触ると熱いようなこの花の色は、古来「萱草色」(カンゾウイロ)とよばれた。微妙な色だから、ネットで調べてみても「明るい黄色がかった橙色」とか「やや淡い赤味の黄赤」「黄みの強いオレンジ色」などと表現され、カラーコードでもいろいろある。やっぱりうまく言うのは難しそうだ。
 
カンゾウは、別名忘れ草とも言われ、辛いこと憂きことを忘れさせてくれる花であった。(ワスレナ草とは正反対。)そのため、喪服の色でもあったようだ。少し派手すぎだとおもうのは、現代人の感覚か。

(参考: https://blogs.yahoo.co.jp/geru_shi_m001/65549408.html

萱草色は、黄色いクチナシやキハダと赤いスオウやベニバナの染料を混ぜて染めたものだという。
ところが、萱草色に似た色で、黄丹(おうに・おうだん)という色があり、それは皇太子が着る袍(ほう)という式服の色で、一般の下々は使うことが出来ない禁色だった。そこで萱草色は、クチナシとベニバナの組み合わせは避けたのだとのこと。カラー見本でみくらべてみると、黄丹のほうが赤が強いようにおもわれた。
だが、こうした微妙な色を区別していたわれらご先祖さんも、たいしたものだ。