万葉集のモミジは黄色?

散り敷いてさあ踏んでください山紅葉
 
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少し足を伸ばして浜松市の浜北森林公園へ紅葉を見にいった。広大な自然の森がひろがり、標高は高くないがまあまあの紅葉がみられた。鮮やかな色の葉はいずれもカエデの仲間であろう、その赤、紅、黄の微妙な配色の世界はしばらく浮世を忘れさせてくれた。
 
モミジというと紅葉と書いて赤色の樹木を思い浮かべるが、万葉の頃はそうでないらしい。

桜井満氏の「万葉の花」(雄山閣)を開いてみよう。
万葉の時代には、木や草の葉が秋になって色づく意を表すモミツという動詞があり、その名詞形がモミチであった。モミヂではなくモミチであって、これが濁音化するのは平安時代に入ってからのことである
万葉集にはモミツ、モミチ、モミチバが100余例あり、その用字に、「黄葉」を当てたものが70余例と圧倒的に多く、赤系の文字は4例に過ぎない。すなわち紅葉ではなく黄葉と書くのが一般的だった。
その理由は、ハギの下葉の黄に色づくこと、野辺全体の草木や山全体が黄色系にもみじする植物が多いからだろうが、萩のもみじに赤の字を使う例もあり、必ずしも色と文字は一致していない。それどころか、真木(スギやヒノキ、サネカズラなど)も「もみち」すると詠われているので、まだまだ研究が必要だ。・・・とのこと。

現在より黄色でとらえられていたのかもしれない。
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さて、現在は紅葉するといえば、イロハモミジやオオモミジなどを思い浮かべるが、「もみじ」はもともと樹木の固有名詞ではなかった。それが鎌倉時代頃から、美しく「もみち」するカエデ類を「もみじ」と呼ぶようになったらしい。また、カエデはカエルテ(蛙手)のルが省略されたもので形が似ているところからつけられたのだという。
 
桜井氏が紹介している万葉集の歌を孫引きしておく。作者不詳。いいですね万葉集は。
 
子持山若鶏冠木(わかカエルテ)のもみつまで寝もと我は思う汝はあどか思う(3494)
(こもちやまわかかえるでのもみづまでねもとわはもう なはあどかもう)
口訳 子持山の若いカエデの葉が色づくまで一緒に寝ようと思う。お前はどう思うか・・・
 
・・・そう単刀直入に言われても、ね。
  (子持山は、群馬県北部にある1296mの山)