コウヤボウキが咲きました(キク科)

秋の山隠れて咲く花みな愛し
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山から頂いてきた一株が、花をつけた。
今年伸ばしたヒョロヒョロした枝の先に、一つずつ花がつく。花びらの先がくるくる反り返って、繊細で面白い。この花は10個程の花が集まってできていてその構造も先日紹介したテイショウソウなどと似ている。
面白いことに、今年伸ばした枝につく葉は丸っぽく互生しているが、これが2年目になると3枚ほどの細くてギザギザした葉に生え変わる。そして花は一年目の枝にしか咲かない。
とにかく地味で、草かと思っていたら低木だという。山の林の中に這うような低い姿勢で生え、せいぜい1m程度の大きさである。けれどこれを見つけた時は胸がキュッとする。
 
コウヤボウキの名は、高野山では竹を植えることを禁止したので、竹の代わりにこれをホウキにしたことに由来するという。細い枝を束ねて箒にするのだが、特に高野山だけでなく各地で普通に使われていたようで、万葉集にある「たまはばき(玉掃)」も、コウヤボウキであるという説が有力である。

たまはばきは、万葉集には2首あり、大伴家持
始春の初子の今日の玉箒手に執るからにゆらぐ玉の緒 巻20(4493)
について、万葉植物学者の松田修氏は、

「正月初子の日に、養蚕室を掃き清めることから起こって、天平年中正月、宮中で養蚕に事よせて侍臣にコウヤボウキで小形の箒を作りこれに小さい玉を貫いたものを賜り、これをもて遊びながら歌などをよみ初子の風流となったもので、玉箒の玉は、玉をつけた箒の意味で、コウヤボウキもこの名で呼ばれるようになったものと考える。」と書いている。(「万葉植物新考」社会思想社
 
この玉箒は、正倉院の宝物として今も保存されているのだという。ネットでそれを見つけたので参考までに掲載。
 
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「宝物随想 玉箒の揺らぎ」(正倉院紀要(37), 190-179, 2015-03  宮内庁正倉院事務所)からお借りしました。