ハマゴウ咲く・・・小泉八雲の焼津の浜

ハマゴウに雨来る浜や海冥(くら)し

 

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ハマゴウがそろそろ咲いているだろうか、と焼津の石津浜に行ってみた。ハマゴウはシソ科の植物。この砂浜に広く繁茂していて、夏の花の時季には爽やかな青紫が一面に広がる。というらしいが、私は意識してみるのは初めてなのだ。

長雨の合間を見計らって浜に向かうと、少し淡い青が、砂浜を覆っていた。おお咲いてるね!タイミングはちょうどよかった。花もいい感じだ。枝をもぎ取るとハーブのような香りがする。ネットで見ると「浜香」といわれ線香などにも使われたという記事も眼に入る。

 

実は春先に、木質状になって砂地から頭を出しているその枝が、少し芽吹いていたのをみつけて、咲いたら来てみようと考えていたのだ。その後5月に様子を見に来たときは、まだ葉っぱだけだった。

でもこの浜には、いわゆる浜辺の植物がみられて、訪れるだけの楽しみは与えてもらえる。春先にはハマエンドウハマボウ、コウボムギ、ハマヒルガオなどがたくさん咲いていて、楽しませてもらった。どちらかと言えば、海よりは山の好きな私は、これまで浜の植物に興味を持ったことがなかったが、ここを知って一変した。砂地の植物は、共通してたくましい印象があるが、花は可憐だ。

 

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焼津の浜と言えば、小泉八雲を連想する。当時東京帝国大学の教師をしていた八雲は、乙吉という浜の魚屋の2階に起居して、何年か夏をこの浜に遊んだ。そして「乙吉のだるま」など焼津をテーマに短編もいくつか書いている。

改めて短編を読んでみると、かれはただ海が気に入っただけではなく、乙吉など当時の田舎の庶民の素朴さ、実直さ、倹しさ、信心深さに目を見張り、職人の技術に驚嘆し、それらに深い愛情を注いでいたことがよく分かる。

八雲はもう120年も前のことだ。八雲が歩いた、この浜の風景もすっかり変わった。浜は埋め立てられて港湾施設になり、深層水の研究所などもできている。防潮堤が集落と海を遮断している。そして乙吉の家は、今は明治村に移され保存されているという。