水鳥は哀しくもなし波のまま
近くの沼のぐるりを歩いた。ゆっくりで小一時間はかかった。この時季は野鳥がたくさん見られる。けれど残念ながら私は鳥には全く目が利かない。
白鳥くらいは分かるが、コハクチョウかオオハクチョウかは、よく分かっていない。
今日は白鳥が5,6羽、沼の反対側の葦辺にみられた。ここ数年毎年のように見られるので、もうあまり感動がなくなってきて、最近は白鳥を狙うカメラマンの姿も少ない。私の小型カメラで一枚。
カモの仲間は、区別がつかないので無視する。オオバンなどにも眼をむけない。
池の端を静かに歩いているのだが、足下からカモやサギが大声を出して飛び立つ。逆にこちらがびっくりしてしまう。静かといえば、寒鮒釣りの人たちは本当に静かに水面を見たまま動かない。こんな沼での釣りは何が楽しいのだろうか、孤独に沈潜している。
と思ってふいと釣り人の脇をみたら、なんとそのすぐ1mほどのところに大きなアオサギがじっと立っていて、釣人と並んで同じ水面を見ているではないか。これには驚いた。釣った魚の分け前を知って近くにいるのだろうか?
それにしても釣り人は、ほとんど三昧の境地で、忍法でいう、気配を消しさっている、と感心し半ば呆れて私も静かにその場を立ち去った。
(杭にとまるのはウミウでしょうか)
広い沼には棒杭が何本か立っていて、たいていそのすべてに鵜がとまっている。鵜はカワウとウミウとがいるが、この沼には両方いると思われる。今日近くに来たのはカワウだろう、どう猛な顔なので一枚パチリ。
(これはカワウか)
その先にゆけばカワセミの巣があるはず、と私が前々からにらんでいる場所だが、案の定、鮮やかな瑠璃色を見つけた。しかも今日は2羽が鳴きながら戯れ?ていた。初めてのシーンである。恋の季節なのだろうと決めつけてしまったが、もしかしたら縄張り争いなのかもしれない。しばらく見ていると何度か水に飛び込んだが、あまり真剣でもなく、獲れた様子はなかった。この季節は枯草の中で不釣り合いなほどきれいな色だ。
その他見えたものは、ジョウビタキ、つぐみ、メジロなど、いずれも正確に見分けることができないが、そんな類のもの。
最近の暖冬、沼を歩いていても汗をかく。鳥たちも多分しのぎやすいのだろう。みていても牧水の「悲しからずや」の感慨にはならなかった。