唇の色フシグロセンノウ

「その赤させったら、よくよく15、6の娘の唇(くち)のようでごわすど
信州の山里、鬼無里の人がフシグロセンノウをこう説明したという。
書き留めたのは宇都宮貞子さん。いわば植物の民俗を信州の各地から聞き書きした女性である。彼女は、草木とともに生きている信濃の人たちの飾らない生の声を、これまた飾らない、けれど愛情深い言葉ですくい取っている。
フシグロセンノウのご自身の文章も、はじめの10行ほどをここに書き出しておみせしたいほどだが、
・・・あの変わった赤の色は・・・いつ見てもはっとする・・・水晶で洗ったようにさわやかで、全く類がない。・・・白い小さいかすれのあることがある。ざらっぽい画用紙へ絵筆をさっと刷いたときにできる塗り残しのようだ。・・・  (「夏の草木」新潮文庫
あとはご自分で。我が家のフシグロセンノウもよく咲いてくれた。
 
  
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