秋の花野のセチメンタル

めぐりあう不思議哀しき花野かな

 

まだ日盛りの堤防は体にきついが、それでも時折の涼風に慰められながら、少し歩いてみた。暑い暑いと怠けているうちに、季節は確実に秋を深めているようだ。花たちはすっかり秋の風情である。見渡すばかり緑の草が、ことごとく草花だったのだと、驚かされる。

まさに、

緑なるひとつ草とぞ 春は見し 秋は いろいろの花にぞありける

 (古今集 秋上 読み人知らず)

 

さて堤防の花をふたみつ。

 

吾亦紅 (バラ科

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 吾亦紅さし出て花のつもりかな 一茶

 

カワラマツバ (アカネ科)

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葉が松葉に似ている。

 

アキカラマツ (キンポウゲ科

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カラマツソウは夏の図鑑で花期は7-9月とある。アキカラマツは秋の図鑑で花期はやはり7-9月とある。この時期夏と秋は区分しがたい。秋の花といっても晩夏が多い感じがする。

 

ツリガネニンジン (キキョウ科)

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信州では「トトキ」と呼んで春の山菜の一つ、と宇都宮貞子さんが1972年に出版した「草木おぼえがき」に記しているが、私は食べたことがない。その後改定した「秋の草木」では、次のようにおしゃれな文章が追加してあった。

「薄い藍紫の小鈴が沢山下がって愛らしい。…このチャイムの中子は長いのだ。お寺の軒に下がる風鐸と同じで、文字通り風で鳴らすためなのだ。ただ風の神アイオロスが奏でるこの音は、人間の耳には音として捉えられぬヘルツだから、そばでルルルルルとかぼそくひびくカンタンの声が、それではないかと思ってしまうのだ。」*1

 

*1 「秋の草木」宇都宮貞子 新潮文庫