「き・らめく・・・展 2019」を見て

美術展わが絵恥ずかし部屋の隅 

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八月の末、新聞で目にした「き・らめく・・・展 2019」を静岡県立美術館に見にいった。名前も知られていないマイナーな美術展なので、同館で同時開催されていた熊谷守一展に比べ客足には当然雲泥の差があった。

 

ちょっと変わった美術展だった。

油絵、イラスト、水彩画、人形、陶芸、額からはみ出している立体絵は紙粘土。様々なジャンルの作品が5,60点展示されている。説明員は一人の姿が見えるだけだ。

その方に伺うと、数年前に長野県で画家や写真家、工芸家たち有志が集まって団体を結成し、自ら発表の場を設けようと松本、金沢、富山などで年数回展覧会を自主運営しているのだという。銀座の画廊にも呼ばれるようになったというから技量は確かだ。経費は会員の年会費から捻出。展示も自分たちで行うという。

 

静岡県立美術館を、とてもいい施設だと褒めてくれて、

「美術館も自分たちで選びます。有名でも使いにくい美術館も多いですよ。ここは照明もLEDではないから自然でいい。なるべく外光を入れたいと思ってここの壁も外してもらいましたよ。」

確かにいつもの壁がなくて、庭が見えている。

さらに伺うと、今回は20数人の会員の中から5人の作品を展示しているとのこと。まだ絵画を始めて3年の人も出展しているというので、よく見ると素人っぽさが残る絵がある。

「会員の上手下手は問題にはしないんです。ただその時点で出来る精いっぱいの作品に仕上げること、手を抜かないことを大事にしているんです」。

 

会員はプロ、セミプロの方が多いようだが、営業意識よりも創造・発表の喜びを伝えたいという意識が強いように感じられた。美術への取り組み意欲が等身大に伝わってくるように感じられて、私も会場を辞すときに、下手な絵だけれどもう少し頑張ろう!という気持ちになった。心温まる美術展だった。

 

展覧会というと、大きな美術館は集客の必要もあり、どうしてもメジャーな泰西名画や大〇〇展といったものになりがちだ。作品自体は素晴らしいのだろうが、私は最近、そうした人気の展示会に行って、行列を作って「鑑賞」する気持ちにならなくなった。

逆に趣味のグループの展覧会は、各地の公民館などで目白押しだが、もう私は見てもあまり刺激を受けなくなった。この二つタイプを併せ持つものはないのだろうか。素晴らしい美術品と独占的に相対することができ、しかも身近で気軽に行けるという。探して出かけろ、と言われそうだが…。

 

そういう意味では、この「き・らめく展」は、創作と発表の刺激を直に感じ取れる展覧会だったという気がしている。

そのあと2週間ほどして、ご丁寧にもお礼状が届いた。