美術 無駄話

兵馬俑とロダンと

兵馬ねむる大地に春や二千たび (腰を下ろして弓を構えている) 静岡県立美術館に、兵馬俑の巡回展がきたのでみにいった。 兵馬俑は、秦の始皇帝を死後にも守るために、埋められた兵士や馬などの像である。2200年もの時を経て目覚め、世界遺産に指定された。…

「ゴッホの手紙」を少しめくってみた

ヒマワリを生命の花とや描きけむ (手前の二階家がゴッホがアルルで住んだ家、外が黄色に塗られていた。ゴッホは「黄色い家」に描く。これはその素描。(「ファン・ゴッホの手紙」より) 「ゴッホの手紙」は古く岩波文庫からでていたが、新たな訳も出ている…

「き・らめく・・・展 2019」を見て

美術展わが絵恥ずかし部屋の隅 八月の末、新聞で目にした「き・らめく・・・展 2019」を静岡県立美術館に見にいった。名前も知られていないマイナーな美術展なので、同館で同時開催されていた熊谷守一展に比べ客足には当然雲泥の差があった。 ちょっと変わっ…

クレーの「母と子」に寄せて

今年も母の日がくる。 パウル・クレーの絵に谷川俊太郎氏が詩をよせた、「クレーの絵本」という画詩集をみた。 クレーの絵は全部で40点掲載されているが、その最後がこの「母と子」(1938年)。 まるで神話のように単純で不動で、そして愛と遊びがある。一…

私的な(俳句的)風景画論ー2 セザンヌのパレット

三月や十八色のいろ絵の具 ポール・セザンヌは毎日のようにセントビクトワール山を写生に出かけていたという話は誰も知るところだが、しかしじっと風景を見ていたのに、何故あのような写実とはいえない絵を描いたのだろう。 野には花が咲いてもいただろうに…

私的な(俳句的)風景画論ー1

立春やマチスの空に開く窓 (マチス 「開いた窓、コリウール」 1905年) 静岡に県立美術館ができたのは1986年、もう30年以上が経った。 館の基本的なテーマは「風景画」だった。当時山梨県立美術館がミレーの「晩鐘」で集客していたのに対し、漠然とした「風…

子規と絵または石膏像のデッサン-2

大掃除ローマ男にハタキかけ (日本の座敷に置かれたアグリッパ。年末の大掃除で、石膏像も叩けば誇りがでる?) 石膏像が教室の棚に並んでいる。 ミロのビーナス、メジチ、アグリッパ、マルス。いろいろ居るのだが、分かるのはビーナスくらいで、他は名前を…

子規と絵または石膏像のデッサン-1

冬の日や石膏像は眼を閉じず (アグリッパの石膏像) 寝たきりの子規にとって、絵を描くことは喜びだった。子規は、「僕に絵が描けるなら、俳句なんてやめてしまう」とまで言っている。 子規は中村不折などとの交際の中から、西洋画の知識を会得していったの…

木喰の微笑みを見に行く

柿一つ供えてありき微笑仏 山梨県身延町で「木喰展」が開かれているので出かけた。 木喰上人はご当地の出身であり、また今年は生誕300年にあたるのでこの企画になったようだ。NHKの日曜美術館でも紹介されたため、遠来の客もあり駐車場はいっぱいだった。 会…

ルノワールの「洗濯女」と妖怪

ルノワールの「小さい洗濯女」 シュテーデル美術館 JR静岡南口に、ルノワールの彫刻が2体あることは、以前ブログに書いたことがあるが、その一体は「洗濯女」で、屈んで片膝をたて洗濯物を手にした裸婦像である。 (参考:https://blogs.yahoo.co.jp/geru_s…

美女蒐集

美術展四の五の言わずに美女愛でる ( ボッティチェリ 「シモネッタの肖像」) (バロトロメオ・ヴェネト 「フローラ」) ( フィリップ・ヴェイト 「バロネス・ヴォン・ベルヌスの肖像」) ( フィリップ・フォン・ウーデ 「婦人の肖像」部分) ( エルンス…

クラナッハのヴィーナスをみて

今回の南ドイツツアーでは、クラナッハの絵を何点か見ることができた。 (駆け足で、写真を撮ってきただけのことだが・・・。) クラナッハの裸婦は、私に白いクリスマス・ローズを連想させる。 少し妖しい小悪魔的な色っぽさを漂わせているのだ。 これはフ…

大塚国際美術館とコピーとベンヤミンのこと

*今日のブログは、あれこれ妄想した個人的なメモの色合いの濃いものであり、読むに耐えなく、かつ時間の無駄になるので、アクセスされた方には申し訳ありませんが、そのままお帰りになることをお薦めします。 大塚国際美術館を訪れてすでに2月ほど経つが、…

神の「沈黙 Silence」

冬晴れや梢の先に答えなし 何か気になったので、マーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙」をみた。遠藤周作の昭和41年の小説だから、もう半世紀前の作品の映画化ということになる。しかもアメリカ人の監督。なぜ今なんだろうなあと思いながら。 あらすじ…

人形浄瑠璃と「江戸時代人物画帳」(川原慶賀)

木偶(でく)廻し木偶をたちまち女にす 淡路島で人形浄瑠璃を見る機会があった。 ここの人形浄瑠璃は、国の重要無形民俗文化財に指定されている。かつては多くの座があり、大阪に伝播し文楽の基となるなど各地に伝わったが、次第にさびれ現在島内で常時公演…

若冲の墓に詣でて

笑いつつ羅漢埋もれる落ち葉かな 伏見稲荷へ詣でてから近くにある石峰寺に寄った。大きい寺ではない。 斜面の窮屈な家並みの中に寺の看板と標石があり、そこからきれいに清掃された石段が続いていて、それが参道になっている。両側の植え込みには南天が真っ…