曼殊沙華 赤と白

曼殊沙華白く咲かせて色懺悔

人差し指ほどの茎が伸びてきたなと思っていたら、すぐに花が満開になった。彼岸花の名のとおり、暦通りにやって来てくれるのが、うれしい。

暦の名前と言えば、セツブンソウ、半夏生、八朔などがすぐ思いつくが、最近花の時季が乱れ始めているのが気がかりだ。

 

庭に咲いた眼が届かないあたりのを摘んできて玄関に挿しておく。複雑な花弁が絡んで離すのが厄介だ。赤花は庭では暗く感じるので、植えるのは白花にしている。赤はあまりの艶やかさのためか何か魔性を感じさせるのだろう。

われにつきゐしサタン離れぬ曼殊沙華  杉田久女

 

でも、白にはそうしたデーモニッシュな印象は少なく、庭にいても心地よい。

 

曼殊沙華共産党の旗のもと

球根がどんどん増えて、ほっておくとまわり中球根だらけになる。畑の斜面も赤一色で、集団で主張してくる。50年ほど前のメーデーの行進風景を思い出す。

宇都宮貞子さんは「秋の草木」(新潮文庫)の「ひがんばな」で、「私は彼岸花ほど立派な花はあるだろうかと思っている」。「これこそ菩薩の宝髻(ほうけい)をかざるに最適だ」と褒めちぎっている。そういう印象ももちろんあるのだが。

キツネノカミソリ ヒガンバナ科

宇都宮貞子さんは、また、阪田のYさんのヒガンバナの赤い花枯れて、あと細おい葉あが出るんやが、その葉あをキツネノカミソリいうねん。花はキツネノカミソリやあらへん」というのを、全くその通りだ、と書いている。

いまの分類ではキツネノカミソリは、べつの種の名前になっている。ひがんばな自体は、有史前外来種なので日本での歴史は長いのだが、文献にはあまり出てこない。ひがんばなも曼殊沙華も名前が賢しいので、だいぶ後期になって流布した名前に思われる。それ以前は各地で様々な名でよばれたはずで、キツネノカミソリ、もその一つだったかもしれない。

現在のキツネノカミソリは花期は彼岸花より早い。これもきれいな花だが、妖しさはない。今年もまた、竜爪山のキツネノカミソリをみにいくことができなかった。今年は余りにも暑かった。彼岸花で我慢しておこう。

 

曼殊沙華すっと素足のままで立ち