リュウキンカ野に春の陽を点火する
庭の鉢植えのリュウキンカがもう満開を迎えた。この花は高原の湿原などではよくミズバショウと一緒に咲き、ピカピカした黄金色の花弁は昔の一年生の金ボタンのようである。この花が咲いていると風景が明るく感じられる。
長野の善光寺の北方山中に市営の広大な浅川霊園があり、女房方の墓があるので時おり墓参する。ここにくると飯綱山を背にしてかなりの標高が高い場所なので長野市街地を広々と見渡すことができる。夏でも市街地よりさらに風が涼しくさわやかである。
ここの上の駐車場の脇に、昔から気になっていた植物があり、いつも5月の連休時にくると金ぴかの花を咲かせていた。どうみてもリュウキンカなのだが、異常に大きく50センチはゆうに超す大きさである。写真はもう7年前のものだが、まだあるだろうか。
実は、これはエゾリュウキンカという花らしいことを後で知った。ある図鑑によれば、北海道と本州北部に分布し、リュウキンカの北方形で、大きい以外はまったく普通のリュウキンカと変わらないらしい。信州にこのエゾリュウキンカが分布しているのかどうか、私は知らないし、この場所以外で目にしたことがない。
宇都宮貞子さんの「春の草木」(新潮文庫)をみると、北信の飯縄高原の大谷地湿原を散策して一面のリュウキンカが見られると記述している。戸隠の中社では「ジクタバナ」とよんで葉を茹でて食べる、ともかいている。
この「ジクタ」はじくじくした田のような所の湿地の意味だが、私はこの場所から30kmほどの生まれであり、じくじくした湿地を「ジクタミ」いった方言をなつかしく思い出す。とくに雪解けの春先はじくじくした土地柄であった。